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ケース2 死神の足音④

 音が聞こえる。何かが弾む音だ。

 ――ズクン。

「ぬう」

 焼けるように来世の左目が痛んだ。心臓の鼓動に合わせるように、少しずつ痛みが増していく。

「来世さん、目が真っ白に光ってますよ」

「……う、黄泉路報せの魔眼だ。この魔眼があれば、視界に収めている対象の死期が、目の痛みという形で理解できる」

「え、じゃあ、岩崎さんが危ない!」

 待て、という来世の言葉を振り切り、里香が飛び出してしまう。

 来世の視界には、怯えてしゃがみ込む岩崎と走る里香の後ろ姿が見える。

 ――テン、テン。

 そこに、変化が生じる。岩崎の背後に、着物姿の女の子が現れた。

 赤い着物を着たその子は、細やかな刺繍が施された手毬を、小さな手で弾ませている。

 ……信じられない。来世は、唖然とする。霊感もない者が、怨霊を見ることは難しい。しかし、その姿がはっきりと見える。

 ――ゾワリ、と来世の背筋は泡立つ。

「里香、近づくな。俺が対処するからどくんだ」

 クソ、聞いていない。

 来世は、懐からお札を取り出し、駆けだした。

「ひいい、助けて、誰か!」

 泣き叫ぶ岩崎の五歩後ろに、怨霊が迫る。

 路面に薄く降り積もった雪のせいで、走りにくい。

 それでも、あがくように来世は足に力を込めた。

 ……だが、間に合わない。岩崎を庇うように飛び出した里香の眼前に怨霊が迫る。

「里香! ん?」

「ねえ、お兄ちゃん」

 怨霊は、ピタリと動きを止めた。

「今日はここまで来ちゃった。もう余裕はないわ。鈴が震えている。震えて、震えて、鳴ってしまう。急いで……」

 ――薄れて、消えていく。

 来世たちは、口から白い息を吐き、茫然と女の子がいた地面を眺めた。

 雪に足跡すら残さなかった。だが、暴れまわる心臓の音と、じっとりした汗のおかげで、来世は実在したことを疑わずにいられた。

「はあ、い、意味が分からない。魔眼屋さん、どういう意味なんですか?」

 岩崎は、カタカタと震えながら呟くように言った。


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