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ケース2 死神の足音③

 ――男から依頼を受けた翌日。

 時刻は、二十時を指している。

 依頼人の名は、岩崎いわさき 洋平ようへいという。

 地元で採水した湧水の販売、ウォーターサーバーのレンタルを行っている会社の営業職を勤めている。

 いつも残業でこのくらいの時間に帰ることが多く、当然、日はとっぷりと落ちていた。

 冬の冷たい大気が、太陽という邪魔者がいなくなったのをチャンスとばかりに、道行く人々の身体を凍えさせていく。

 来世と里香は、そんな寒空の中、依頼人の後をつけていた。

 来世は黒のモッズコートとジーンズという出で立ち。闇に溶けるように、音もなく歩いている。しかし、里香はピンクのチェスターコートに、薄い緑のパンツを履き、ザクザクと雪を踏み鳴らすように歩く。

(こいつは、こっそりと歩けないのか? まあ、今回は怨霊が相手だろうから、多少目立っても良いけどな)

 来世は、内心そう呟き、こめかみを掻いた。

 今度、尾行の仕方をレクチャーしなければならないだろう。

「来世さん、幽霊って実在するんですか?」

 顔に不安げな色を覗かせて、里香が呟く。

 岩崎は、会社のあるオフィス街を離れ、閑静な住宅地へと移動したところだ。

 大方、静かな場所に来たものだから、不安になったのだろう。来世は、やや柔らかい調子で答えた。

「まあ、いるかな。ほとんどは無害な奴らだが、時折怨霊と呼ばれる存在が現れる」

「怨霊って、本当に! ……あの、素朴な質問なんですけど、どうして死んだ人が怨霊になったりするんですか? どんな理由があれば、死んでもなお、生きている人に悪いことをするんだろうって思って」

「……理由は、様々だ。生前人を恨むような死に方をしたから許せないという奴もいれば、純粋に生きている奴が羨ましくて殺そうとする者もいる。幽霊だ、怨霊だ、っていうから変に感じるが、幽霊も所詮人だ。人である以上、人に危害を加えたり、殺したりするには、そいつなりの理由があるのさ。ただ」

 来世は、言葉を切り、肩に付いた雪を払った。

「ただ、何です?」

「今回の依頼は、どうも妙だ。岩崎が接触したという幽霊のセリフが気になる。死ぬことを岩崎に告げている一方で、『鈴の音が鳴る前に、どうにかしないとね』、と警告を発している。純粋に死を願っているなら、そんなことをいうはずがないんだ」

「あ、うーん確かに」

 ――大丈夫か?

 里香という少女は、頭が悪い、というよりは深く物事を考えたがらない。いや、ある程度興味が満たされれば、考えるのを止める癖がある。

 来世は、ため息交じりに、「教育しがいのある助手見習いさんだ」と小さく呟いた。

「ん? なんか言いました?」

「いや、何でも。それより、途中でコンビニに行って来い。いつ現れるか分からないからな。こいつは長期戦になるぞ」

 えー、一人で行くの嫌だ! とごねる里香。来世は、働けと冷たく言い捨て、財布を取り出そうとした。

 ――テン、テン。

「待て、動くな」


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