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ケース1 女子高校生失踪事件㉑

 来世さんは一度言葉を切ると、カチッと音を鳴らした。やかんが喚いた音が聞こえたから、もう湧いたのかな。……うん、案の定、やかんの口からお湯が流れたような音が聞こえる。

「なあ、翔馬公園を見張っていた時、お前と同じくらいの女の子がいただろう。あの時の光景を思い出してみろ」

「え、ええーと、ちょっと待ってください。確か、あの時は、気弱そうな子がいて、あ! 優しく笑いかけている男がいました。でも、意外だったな。あんなに穏やかに笑う人が、犯人グループの一員だなんて」

「そう、それが奴らのやり方だ」

 おわ、び、びっくりした。後ろを振り返ると、来世さんがテーブルの上に、ティーカップとティーポット、お菓子の入ったお皿を並べている。

 ……え、マジ。ティーカップが二つある。そのうち、一つは猫が手を振っている可愛らしいデザインのカップだった。

「ほら、座れ。いつまで立ったままでいるつもりだ」

 言われるがまま、来世さんの対面に座る。

 彼は、猫のティーカップを私の前に置き、紅茶を注いでくれた。

 白い湯気が揺らめき、紅茶の良い匂いが鼻をくすぐる。

 私は、ティーカップをゆっくりと持ち上げて、口をつけた。

 外は、ひと月前に比べると寒さが増しているが、なんて暖かいんだろう。

 飲み込んだ暖かな液体は、身体に染み渡って、ジワリとした暖かさを感じる。

 私は、お皿に乗ったクッキーを口に放り込み、また紅茶を飲む。

 ……甘さと香りのおかげかな。さっきより肩の力が抜けた気がする。

「さっきの話の続きだが、奴らは公園に来た少女たちに声をかけて誘拐する。だが、強引に連れて行くのではなく、優しそうな人物が声をかける。実はな、お前と一緒に見かけたあの少女と、事件後に会った。それで、いくつか質問してみて、分かった」

「何がですか?」

「あの時、どのような言葉を男からかけられたのかさ」

 来世さんが、男が少女にかけたセリフを教えてくれた。……セリフを聞くごとに、苛立ちが募った。私は、少女の気持ちになって、そのセリフが言われた場面をイメージしてみた。


「大丈夫ですか? 不安そうな顔をしていますね。あー、その僕で良かったら相談してみませんか? こう見えても、ボランティアが大好きで、よく人の相談に乗ってるんですよ」

 呪われた、と勘違いをしていた少女は、不安よりも安心を覚えたはず。

 だって、身近な人には呪われた、なんて話は相談しにくい。おかしな子と思われて、大切な人に距離を置かれたら、きっと悲しくて泣きだしてしまうだろう。

 でも、見知らぬ親切な人なら、話しやすい。身近でない分、たとえ嫌われたとしても、「仕方ない」とあきらめがつくし、相談して悩みが解決できれば儲けものだ。

「本当ですか? じゃあ、妙な話をしますけど」

 あの子は、話す。重く積もった泥を吐き出すように、まくしたてるように話したかもしれない。姿の見えない不気味な手から逃れたいから、必死に話しただろう。

 そして、話し終えた時、縋るように男の人を見たかも、いやきっと見たはず。お願い、何とかしてという想いを抱いて……。

「そうなんですか、んん、大変ですね。でも、困ったな、僕じゃお力になれそうにない」

 ああ、やっぱり、と思うと共に落胆するだろう。だが、男はその様子を見て、ニヤリと笑ったんじゃないかな。――だって、獲物が網にかかった気分だったろうから。

「……もしよろしければ、知り合いの霊媒師をご紹介しましょうか? その道じゃ、プロ中のプロと噂の人でしてね、きっと助けてくれますよ」

「ほ、本当ですか。お願いします」

「いえいえ。じゃあ、今から行って大丈夫ですか? ここから徒歩で行ける距離に住んでいるんですよ」


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