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ケース1 女子高校生失踪事件⑯

 女は手足をばたつかせ、床や来世の身体を叩く。

 ――離すものか。

 来世は、その一念で痛みに耐えた。

 その甲斐もあって少しずつ、女の身体から力が抜けていく。来世は、行ける、と確信した。だが、

「うあああ」

 予想外の火事場の馬鹿力を発揮した女によって、拘束は解かれてしまう。

「しまった。……ぬう」

 かすむ視界と熱を帯びた全身の痛み。それらのシグナルが、活動時間の限界が近いことを来世に告げる。

「お前に分かるものか」

 荒く腹の底から吐き出されたような声。来世に女の話を聞いている余裕はない。が、しわが谷底のように深く刻まれるほど、表情を歪めた女の顔が、どこか泣いているように来世には思えた。

(チィ、仕方ない)

 来世は、ため息を吐くように言葉をかけた。

「何がだ?」

「私の何が分かる? 蔑まれ、醜さだけでなく、人格さえ否定された苦しみが」

 女は自身の身体を抱きしめた。震えた体から水が怯えたように吹き出し、血走った目が蛍光灯の光を浴びて、テラテラと光った。

「私はあいつらに負けずに懸命に生きたんだよ。けどね、駄目だった。駄目だったんだよ。腐ったゴミは、私をゴミと決めつけ、人生を破滅させてくる。だから、奴らを逆に破滅させてやったんだよ。最高だった。

 私は、その瞬間本当の人生を手に入れたんだよ。……これは、復讐さ。私の才能を使って、女どもを狂わせてやる。私は罵られた。だから、やり返して何が悪いんだよ」

 独りよがりな独白。来世は女を知らない。だからこそ、その独白の意味を察することしかできない。――でも、だからこそ、理解した。この女は、ただ、

「道を外してしまっただけだ、お前は」

「偉そうに、何を」

「俺の目を見ろ。俺は、初めから世界に弾かれた存在だ。先天的な除け者と後天的な除け者。お前と俺の違いはそれだけだ。……一つ除け者の先輩として遅すぎるアドバイスをやる。除け者の世界にだって、ルールはある。それは、やったらやり返される、ということだ」

 女は眉を顰める。

 来世は、長く息を吐き、良く通る声で語った。

「お前はやり過ぎたんだ。洗脳した女どもの中に、とある大物政治家の娘がいた。そいつの親御さんの願いは、犯人を死が生ぬるいほど、恐ろしい目にあわせてほしい、だそうだ。

 ――ああ、だが困ったものだ。俺は、殺しはしない。死より恐ろしい目にどうあわせれば良んだろうな? ……はあ」

 一拍置き、来世は感情が抜けた声で言った。

「けど、悲しいことに。俺は、相手を殺さずに恐ろしい目にあわせてやれる。いや、罰を与えてやれる、かな」

 女は、息をのんだ。来世の両目が、青から黄金色に変化し、天秤のような模様が浮かび上がってきたからだ。天秤は、鮮明に赤い色をしている。だからだろうか、女は「血のようだ」と恐ろしげにつぶやいた。


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