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群青、君が見た空の軌跡  作者: 乃上 白
第一章
92/190

92話 約束

「きっとフランツは、兄を釈放するために動いてるんだと思う。

 諜報部に接触してるってわかったのは、元フランツの直属の上官だったエルンスト大佐から聞いたの。自身も現役のエースパイロットで、訓練兵時代のフランツの操縦を見て直々の指名で自分の隊に入れた人よ。それからフランツは大佐にとてもよくしてもらってたの。隊を離れた今でもまるで弟みたいに可愛がってもらっているわ。

 その大佐がこの前私をわざわざ司令室に呼んで、フランツが諜報部の人間と会っている、何か妙なことに絡んでないか心配なんだが君は何か知らないかって言われて…。」

 アレクはエルンスト大佐とは一度話したことがあった。機体改良のための会議に同席していたのだが、他の軍の上層部の人間たちに比べてもとても良識があって信頼できる印象があった。


「エルンスト大佐が言うことはきっと本当だろうな…。しかし、ソフィアのお兄さんを釈放するという目的なら治安維持部隊の上層部に接触するべきじゃないか?何で諜報部に…。」

「それは私も思ったんだけど…、フランツは兄にはある程度の力を持った協力者がいると見ていたわ。手紙をやり取りできるようになったのも、軍の内外両方に協力者がいないとできないって。兄は反政府的な手紙やビラを配っていたことで軍に逮捕されたけど、もしかしたら本当はもっと大きな組織に関連しているのかもしれないって、フランツはそう考えたのかもしれない。」

「大きな組織って…反政府組織とかか? アトリアにそういう組織があるというのは聞いたことはあるが…。」

「私もあるわ。貧困街では反政府組織と名乗る人たちがテロや暴動を起こしたりすることもあったから。でも、兄がそういう組織と関連しているなんて全く考えられなかった。兄は…とても穏やかで暴力を嫌う人よ。日常的にテロを起こしているような組織に加担してるなんて到底思えなくて…。」

「フランツは反政府組織の情報を探るために諜報部と接触してるのか。…フランツならやりかねないな。」

「うん…。フランツは何でも恐れたりすることがないから…。でも心配なの。反政府組織の情報を探るなんて、軍から疑いをかけられても仕方ないわ。でも直接言ったってフランツは聞かないだろうし、どうしたらいいのか分からなくて。」

 確かにフランツは言っても聞かないだろう。ただ釈放のために動くことを止められなくても、少なくても軍や政府から疑われるような行動だけは避けなくてはならない。


「…わかった、俺から話してみるよ。フランツやソフィアに影響が無いように考えるから、もう安心して大丈夫だよ。」

「そんな…!それはアレクに負担が掛かり過ぎるわ!私も一緒に話す。それに、私の兄のことなんだから、私に影響があるのは当然よ。でももしフランツやアレクにまで何かあったらって考えたら…とても耐えられない。」

 ソフィアはつらそうに俯いた。アレクはそんなソフィアに優しく声を掛けた。

「ソフィアの気持ちはよくわかる。もし俺がソフィアの立場だったら同じように考えるだろう。…だけど、フランツに話すのは俺に任せてくれないか。フランツはソフィアが止めたら余計に早く解決しようとするかもしれない。これ以上ソフィアに不安を抱かせないためにな。」

 ソフィアは顔を上げてアレクを見た。アレクは穏やかに笑っていた。

「大丈夫、俺はうまくやるよ。設計士は常に軍からの要求と技術者からの注文との板挟みだから、交渉事は得意なんだ。それに俺とフランツとの付き合いはソフィアより長い。まぁあいつはいつも真っ直ぐだから、考えてることを読むのはけっこう簡単なんだけどな。」

 笑って話すアレクの言葉を、ソフィアは複雑な気持ちで聞いていた。アレクがそう言ってくれるのは本当に頼もしいけれど、もしアレクまで巻き込まれるようなことになったら、話してしまったことを後悔してもしきれない。

「…わかったわ、でもこれだけは約束して。もしフランツが釈放のための動きを止めることに納得せず何を言ったとしても、あなたまで一緒になって動いたりすることは絶対にやめてほしい。…お願い。もし私や兄のことを想ってくれるなら、それだけは…。」

「わかった。約束する。もしフランツが言うことを聞かなかったら、正直にソフィアに話すよ。」

 アレクはしっかりとソフィアの目を見て答えた。ソフィアはやはりまだ不安を感じていたが、それ以上言ってもアレクは同じように優しく答えることしかしないだろう。ソフィアはアレクの目を見返して、黙って頷いた。


 アレクは最後までソフィアを安心させるように明るく振舞ってから、フランツの家を後にした。

 ソフィアが重大な事実を話して自分を頼りにしてくれたことは、心から嬉しかった。内容がどんなことであっても、二人を家族のように想うことが変わることは絶対にない。

 アレクはすでに何があっても二人を守ると決めていた。ただ、この後に起こる事態を予期する術は全く無かった。

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