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群青、君が見た空の軌跡  作者: 乃上 白
第一章
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66話 再会

「ルカ!?」


 アレクは驚いてつい大きな声で名前を呼んだ。すると少女はこちらを見ることもなく逃げるように路地の奥へ去っていった。


 慌てて後を追いかけたが、少女は細い路地の先まで走り、さっと突き当たりを曲がって見えなくなった。アレクも同じように曲がったが、そこにはすでに少女の姿は無かった。

 それでも姿を消した速さとまっすぐに伸びる路地の形状から、少女がすぐそこにある建物の勝手口から中に入ったことは明白に思えた。足音なども全く聞こえないことから、中に入ってすぐのあたりで隠れるように息をひそめているに違いない。そう考えたアレクは静かに声を掛けた。


「…ルカか?俺だ、アレクだ。約束通りアトリアからカザンに戻ってきたんだ。もしお前なら、一度姿を見せてくれないか?顔を見て元気なのを確認したらすぐに帰るから…。」

 勝手口を開けたい気持ちを抑えて待っていると、やがて古い木の扉がキィっと小さな音を立てて開いた。

 そこから出てきたのは紛れもなくルカだった。汚れた男物の服を着て、履いていた靴は限界まで使い古されたようにボロボロだった。

「ルカ…!お前、どうしたんだ?宿の主人からルカが戻ってないって聞いて、家族のもとに帰ったとばかり思ってた。こんなところで何してるんだ!?」

 ルカは何も言わず、その目に大粒の涙を溜めてアレクを見た。しばらくの間ただ静かに見つめ返していたアレクがルカの頰をそっと手をあてると、ルカは小さく口を開けるも言葉にはならず、ついに声を上げて泣き出した。


 アレクはただルカを優しく抱きしめた。元々小柄だったルカの身体は以前よりもさらに痩せていた。華奢なその身体を抱きしめながら、アレクはルカが少なくとも自分が想像したような幸せな生活からは程遠い状況に置かれていることを悟った。



 しばらくそうしてルカを落ち着かせると、アレクはルカを連れてその地域を出た。泣き止んだ後もルカはずっと黙っていたが、常に隠れるようにしてアレクにくっついていることから、アレクはルカが何者からか追われている可能性があることを察した。

 そこでアレクはタラズの中心街にあるVIPが滞在するようなホテルに部屋をとり、一旦そこにルカを匿った。ルカを追う追っ手がいたとしてもこのような高級ホテルにルカがいるとは考えないだろう。


 できるだけ人目につかないようにさっと部屋に入ると、ルカにはシャワーを使うように言い、アレクは近くの店でルカのための衣類や食料を買って部屋に戻った。ルカに新しい服に着替えるよう声を掛けると、アレクは部屋についていた小さなキッチンで温かいスープをつくり、新しい服に着替えたルカに差し出した。


 ルカは黙ってゆっくりとスープを掬って口に入れたが、その瞬間に再び涙が溢れた。アレクは持っていたハンカチを差し出した。

「ルカ、何があったのか…俺に話してくれないか? たった半年だけど、俺はルカのことを娘みたいに思ってたんだ。俺ができることなら何でもするから…。」

 それはアレクの純粋な本心だった。ルカはゆっくりと、涙に濡れた顔をあげた。


 心配そうに見つめるアレクの目を見とめると再び涙が溢れそうになったが、それを抑えるために差し出されたハンカチを震える手でそっと受け取り、ルカは決意したように涙を拭った。


「…ハリラヤクでオトラルにある実家に帰ったの。そしたらその三日後、突然私たちの村にロティタギルの武装組織がやってきて、私の家族が全員ー」


 全てを話そうと決意したにもかかわらず、どうしてもその続きを言葉にすることができなかった。

 ルカはハンカチで顔を覆って大声で泣き出した。アレクはルカの背中にそっと手をかけながら、その言葉の続きを悟った。


 アレクは何も言わずにただルカのそばにいた。ルカはひとしきり泣いて、泣くのにも疲れて涙が枯れた頃、自ら少しずつ言葉を絞り出し、アレクに対して全てを語った。

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