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群青、君が見た空の軌跡  作者: 乃上 白
第一章
52/190

52話 唯一の助けを求めて

 真っ暗な階段を降りた先にあるドアの前で男が立ち止まると、足で床を何回か叩き、目の前のドアが開いた。ドアの向こうでは数人の男たちがテーブルに大きな地図を広げて話をしていた。


「エラルド、ドレイク、緊急事態だそうだ。会議の途中で悪いが少しこいつらの話しを聞いてやってくれ。」

 部屋まで案内した男がそう言うと、部屋に居た男たちが一斉にこちらを見た。

 部屋の手前に一人、銃を持って奥の壁に背をつけて立っている男が一人、テーブルの上の地図を覗き込んでいる20代くらいの若い男が三人居た。

 クリスは状況を把握するよりも先に口を開いた。


「ハンスが今港から自分の機体に乗って飛び立ったんです!どこへ行ったのか分かりませんが、方向は真っ直ぐラスキア本土を目指していました。」

 クリスはこの男たちが誰なのかはもちろん、ここが何の組織かなど全く分からなかったが、今は他に頼るところが無かった。少なくともゾフィーを連れて来た女性の言動から、この組織が二人の敵ではないことは明らかだった。もし敵であったなら二人を拉致した時点でとっくにどうにかしているはずだ。


「飛び立ってから何分経ってる!?」

 クリスの言葉を聞いた手前の男がすぐさま口を開いた。

「今はまだ…5分と少しくらいです。」

 クリスが答えると、その男はすぐに地図の周りにいた男の一人に指示を出した。

「エヴァン、すぐにラスキア本土の航空部隊に連絡してくれ。ラスキアード手前で航空学校の機体を誘導して無事着陸させるように。」

 エヴァンと呼ばれた男はすぐさま部屋を出ていった。クリスは指示を出した男の判断の速さに驚いた。さらにその男は続けた。


「ドレイク、ラスキアードへ向かってくれ。」

 奥の壁に背をつけて立っていた男が途端に驚いた様子で顔を上げた。

「は!?…何で俺がわざわざこの大事な時期に本土まで行かなきゃならねぇんだ!大体あいつの機体はレース用の機体だろうが。今から俺の機体で向かっても間に合わねぇし、運が悪けりゃ即本土の治安維持部隊に撃墜されて終わりだ。」

「わかってる。君、ハンスの機体の航続可能時間は?」

 男はクリスを見たが、すぐに後ろにいたレイが答えた。

「最長でも30分程度です。機体の巡航速度は565km/h、最高速度は667km/h、ここから本土までは約320kmなので、最短の直線距離で飛べたとしても30分という時間はかなりギリギリだと思います。」

 レイの正確な答えに男は頷いた。

「そうだな。ラスキアードのかなり手前で誘導して近隣の島に着陸させた方が安全だ。エミール、そのように追加連絡を入れてくれ。」

 するとまた地図の周りに居た男の一人が頷いてすぐに部屋を出て行った。


「ドレイク、お前には本土でハンスとアレクを引き会わせる手助けをして欲しい。アレクの居場所は一部の幹部しか知らないからお前にしか頼めない。」

 ドレイクという男は再び反論した。

「アレクと引き会わせるのはあいつがこの組織に入ると決めた場合に限ってのはずだろうが。勝手に無茶なことをして死にに行くような奴のために本土の部隊を動かすこと自体、俺は反対だ!」

「確かにそうだが、ハンスにアレクの居場所を教えたのは俺の失態でもある。まさかレース用の機体で本土へ飛ぼうとは思わなかった。お前の言う通り、もし軍の治安維持部隊に見つかれば即撃墜されるだろうからな。」

「こっちからどんな情報を与えたとしても判断したのはあいつ自身だ。それで死んだらそれまでだろ。あいつはどうせそれも分かった上で飛んだんだ。それよりこっちの部隊が軍に見つかる方がまずい。下手すりゃ計画が破綻するぞ。」

 それを聞いたジルベールは焦って口を開いた。


「あいつが甘い判断で無謀な賭けに出たのは確かだけど、そのきっかけを与えたのはそっちだろう!?そもそもハンスたちを拉致した時点で二人の人生に介入してるんだ、かき乱して今更放り出すなんて無責任だ!」

 するとドレイクは呆れたような目でジルベールを見返した。

「俺たちが介入してなきゃ今頃とっくに二人とも死んでる。多少寿命を延ばしてやったんだから文句言ってんじゃねぇよ。」

 ジルベールは思わず身を乗り出したが、すぐにクリスがそれを静止した。その様子を見て、最初に三人を案内した男が見かねたように口を挟んだ。


「ドレイク、やめろ。相手は子供だぞ。ただエラルド、俺も現時点でアレクに会わせるのは反対だ。そもそも組織に入ってもいない人間に介入し過ぎだ。」

「…そうだな。クラース、お前の言う通りだ。だが俺は…、正直ハンスにフランツの影を見てる。まだまだ幼いが、フランツが持っていたものを彼も持っている気がする。」

 ドレイクは信じられないという顔でエラルドを見た。

「なんだと!?お前…本気で言ってるのか!?あいつをフランツの代わりにでもしようって言うのかよ?!」

「そうは言ってない。フランツの代わりは二度と現れない。ただ可能性の話だ。もちろん決めるのはハンス自身だが、少なくともその材料を提供するところまでは見守りたい。…これは俺の我儘だ。」

 さらにエラルドは改めてドレイクの目を見据えて続けた。

「ドレイク、頼む。ハンスとアレクを会わせてくれ。」


 ドレイクは何も答えなかった。しかし少しすると諦めたように口を開いた。

「…お前の我儘を聞くのは初めてかもしれないな。俺はあいつのことはどうでもいいが…、お前のことは信頼している。」

 出口に向かったドレイクに、エラルドはありがとう、と言ってその背中を見送った。


 三人は展開の速さと話の内容に混乱していた。ハンスとこの組織には何か深い関係がある。ハンスはこの組織に入るよう誘われている?フランツはハンスの父親だ。その代わりにハンスが−


 クリスが咄嗟に考えを巡らせていると、それを察したアンネがエラルドに言った。

「今ここに居る私たちにできることはもう無いわ。エラルド、三人には全て話すしかないわね?」

「…そうだな。部屋を変えよう。クラース、状況に応じて本土に指示を出してくれ。ヴィドーは何かあったらすぐに俺に報告してくれ。」

 部屋に残った男たちに言い残すと、エラルドは三人に外へ出るよう促した。元の薄暗い通路に出ると、アンネが奥にある小さな部屋へと三人を案内した。

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