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群青、君が見た空の軌跡  作者: 乃上 白
第一章
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10話 仲間と基地

 ハンスたちがレース用航空機をカスタマイズしている基地は、もともと古い造船所だった。

 チームクルーの一人であるジャンの家が所有しているのだが、随分前から使用されておらず、長い間廃墟となっていた。その場所を現在はハンスが乗るレース用機の格納庫兼作業場として利用している。


 はじめてジャンに案内されてここに来たときには、海の目の前だからか、建物の外側の金属部分は潮風にさらされてすっかり錆びてしまっていた。そのため見た目には完全な廃墟に見えた。古い扉も錆びがひどく、開けるのにかなり苦労した。

 ただ開けてみると、想像以上に広い内部と、そこに置かれていた沢山の機械や工具類を見て、全員が歓声をあげた。ハンスもここなら自分たちの手でレース用機の改造や整備ができると思い、すごくワクワクしたことをよく覚えている。

 それから少しずつ外装も内装もきれいに整え、必要な物を運び込み、作業場だけでなく古いソファやラジオなども備えた居心地の良い基地が完成した。


「おーいやってるかー?」

 ハンスは今日も学校が終わるとすぐクリスと共に基地にやってきて、扉が開け放たれた基地の正面から中に入った。

「おう、今日はみんな揃ってるぞ。お前ら遅かったな。補習でもあったのか?」

 汚れた作業着を着たジルベールが飛行機の中から顔を出した。

「うん。担任が、俺が次のテストで赤点取らないかって心配してさ。特別に社会の補習をするとか言って俺だけ居残りさせられたんだ。機体の改修も遅れてるって言ってんのに…。」

「そうか。お前は文系科目の成績が毎回ギリギリだからな。理系や専門科目は全部トップレベルなのに差がありすぎだ。担任も万が一ハンスが赤点取ってチャンピオンシップに出られなかったらと思って心配なんだろ。」

「そんなヘマしねーよ!年に一度の大会だぜ。」

「まじで頼むぜ。お前が出られなかったら話にならないからな。」


 ジルベールと話をしていると、散らばって作業していた仲間がちらほらと集まってきた。昨日クルトおじさんの家に行ったエリックとアルバート、レイの3人の他にも、この基地の所有者であるジャン、ジャンと同じクラスのヘンリーとイアンを合わせ、今日は計8人のチームクルー全員が基地に来ていた。


 8人はハンスが乗るレース用機のカスタマイズや整備などを担当する、いわばパイロットを支える裏方の立場だ。だが殊に航空学校においては、チームクルー全員が優秀なパイロットでもある。

 なぜなら、学校では毎年学年ごとに代表パイロットを選ぶため、操縦訓練の授業で常に成績がつけられている。その1年間の成績優秀者のうち、首席がパイロット、2位〜9位までの8人がチームクルーのメンバーに選ばれるからだ。

 パイロットはもちろんチームクルーに選ばれることは、航空学校の生徒にとってかなり名誉なことだった。


 実際の大会では会社の代表としてレースに出るベテランパイロットの方が圧倒的に多いのだが、そんな中航空学校のパイロットとチームクルーにレース用として与えられる独特の制服は、レース会場の中でも特によく目立つ。

 紺色の詰襟に赤い鷹の校章が描かれた腕章を着け、同じ紺色のズボンに紺色のロングブーツを履き、シンプルな紺の制帽を身につけた学生らしく凛々しいその姿は、他の生徒や航空学校を目指す子供たちの憧れでもある。


「ハンス、テストまでの数日間は毎日ここで勉強しよう。俺が要点を教えるから。」

テストの話をしていたら、奥で作業をしていたレイが3人の元へやってきて声を掛けた。レイは常に学年で3位以内の成績をキープしている秀才だ。

「そんなのいいよ。てかそんなことしてる時間ないだろ。機体の改修を急がないと。」

「いや、少しでもやっとくに越したことはない。そして俺も教わりたい。」

奥の壁に設置された作業台で作業をしながら話を聞いていたエリックが突然話に入ってくると、その隣にいるアルバートもこちらを振り向くことなく続けた。

「俺も!あと数学も教わりたい。」

「お前らは自分が教わりたいだけだろ!」

二人に向かって文句を言うハンスを、クリスが穏やかに説得した。

「じゃあ一日30分だけでもいいから、みんなでレイに勉強を教わろう。もし赤点取ったらピットにも入れなくなるし、全員の為でもあるからさ。」

ハンスはしぶしぶながらも30分だけという条件でそれを了承した。



「おい、頼むから頑張ってチャンピオンシップには出てくれよ!お前を負かせる楽しみが減るだろ!」

 突然の声に全員がパッと外を見ると、そこには意外な人物が立っていた。ハンスと同じくチャンピオンシップにパイロットとして出場する予定で、かねてからライバルと目されているヴィルだった。


 同じ街で暮らしてはいても、犬猿の仲である二人がレース会場以外で会うことはまずない。そのため一瞬面食らったが、その憎まれ口だけはいつもと変わらなかった。

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