ヒロイン、「真実の愛」で勝利する
カッとなってやった。
後悔はしていない。
「ナスターシャ、婚約を破棄する」
凜々しいナタス王太子殿下が言った。
「それはどういうことですの?」
応える美少女令嬢。
ナスターシャ様はここタリス王国の公爵家の長女でナタス殿下の婚約者だ。
「すまない。だが私は『真実の愛』を得てしまったのだ。この愛しいリアによって」
ナタス殿下に抱き寄せられる私。
転生して孤児院にいたところをテイル男爵の気まぐれで養女に迎えられた私が学園に入学して1ケ月。
見事王太子殿下をゲットした。
逆ハーも。
「真実の愛」は無敵だ。
「! 真実の愛?」
青ざめるナスターシャ様。
周囲を囲んでいる学園の生徒たちの間に響めきが広がる。
「真実の愛って」
「本当にあったのか!」
「まさか」
すると私と王太子殿下を囲むイケメンたちが進み出た。
宰相子息「私が保証します。真実の愛は本物でした」
騎士団長の甥「凄かった。あれほどのものだとは」
侯爵家次男「私はもう真実の愛なしでは生きていけない」
大商家長男「一度味わえば世界が変わりますよ」
ナスターシャ様は胸の前で手を合わせた。
「本当なので……ございますか?」
「そうだ。これが『真実の愛』だ!」
ナタス殿下は懐から取りだしたものを高く掲げた。
「これこそが本当の『真実の愛』! これをもたらしてくれたリアは聖女! 私はリアと婚約する!」
殿下の手の中で輝くガラスの瓶。
黒い液体が波打つ。
「「「おおおーーーっ!」」」
タリス王国に「真実の愛」がもたらされた瞬間であった。
えーと、醤油愛ということで。
「真実の愛」は商品登録名です。