捏造の王国 その1 ジコウ党議員応援演説の真実、“ホンネちゃん”に聞いてみた!
新シリーズ 捏造の王国 その1
自称民主主義国家で起こる様々なできごとをお届けします。
「さて、どうするか」
ジコウ党アベノ総理総裁選選挙対策スタッフ、エバラギは悩んでいた。
「先輩、もう時間ないっすよ」
後輩のダカザキも不安そうだ。
「投票まで後一週間切ったしなあ」
「だけど、こんなんわかんないっすよ、これホントに応援演説なんですか、“アベノ総理でなきゃダメなんです”って、皆それしか言ってないじゃないっすか」
「イチタカ議員なんて、“フレー、フレー、アベノ、ガンバレ、ガンバレ、アベノ!”とか言い出すし。最初の集会であれはないよ、元総務大臣とは思えないぜ、老けたチアガールかよ、まったく」
ダカザキは舞台中央で久しぶりに注目を浴びてはしゃいでいたイチタカを思い出した。
「何言いたいんだか、さっぱりですよ。だって一応与党のトップ決めるんでしょ、総理になる人でしょ。これから何をやるかとかさ、政策論争つうか、そういうカッコいいの期待してるわけじゃないですか。党員は」
「そうとも言い切れねえけど、ライバルのイシババから逃げ回る、みっともない奴って言われるし。何よりアレだよ、アレ」
「あーあの懇意にしているはずのフトダ派議員に“アベノ総理を絶対応援、裏切るな”という誓約書つうか血判状書かせたっていう」
「時代劇とかマフィア映画好きなアトウダ副総裁が図にのって、自分の指切って拇印とか押したもんだから、他の奴等も同じように自分の血で拇印押さざるを得なかったらしい」
「ひょえええ、裏切ったら、それ使って呪いの人形とか作られちゃうんですか」
ダカザキが震えだした、どうやら本気で怖がっているようだ。
「まあ、さすがにそこまでは…」
エバラギは否定しようとしたが、ねちっこくしつこいといわれたアベノ総理だ。会食で最後の焼き肉の一切れをとられ、恨みがましく文句を言っていたというマスメディアの幹部の話を思い出し、ゾッとした。
「まあ、ともかく、ちょっとばかし、やりすぎて引いてる党員もいるっていうからさ。名誉挽回のために応援演説をネットとかで流そうってことになったんだが」
「あー、もうこのまま流すしかないっすよ。だって俺らが勝手に編集するわけにいかないんでしょう」
「まあ、そりゃそうだけど、俺らが直に聞いてもわかんないやつを、そのまま放映して大丈夫かな」
悩む二人。と、会議室の扉があいた。
「ちょっと、会議中、なんだ事務のトンチギさんか」
「あのう、このようなものを作ってみたんですけど」
事務職員トンチギが差し出したのはUSBメモリ。
「何、これ」
エバラギは受け取ったUSBメモリをみたが、なんの変哲もないただのメモリだ。
「私が作った言いたいこと翻訳機、通称“ホンネちゃん”です」
「はあ?」
「つまり、プログラム作ったんっすか、トンチギさんが」
「はい、私、他人の言うことがわからないときがあるから、本音っていうか、言いたいことを理解したくて」
「ホントならすごいけど、どうやって」
「人は考えていることを無意識に言葉にしているっていう説がありまして、声に出さなくても唇や顎をわずかに動かしているのだそうです。表情筋とか目線とか仕草なども参考にすれば、台詞自体がわかりにくくても、その人が言いたいことがわかるのじゃないかって、自分なりの仮説をたてて作ってみました」
「そ、そりゃすごいね」
本当なら超弩級の発明だ、しかしエバラギは半信半疑。
「で、どれぐらいわかるわけ?」
「そうですね、ちょっと」
トンチギは机の上に置いてあるノートパソコンにメモリを差し込み、マウスを使いパソコンを操作した。
「こう、こう、もう使えます。エバラギさん、さっきの台詞いってみてください」
「え、どれぐらいわかるわけ?」
“えーまさか、ホントかよ、冴えない事務員のトンチギ…”
「わー、わー」
慌てて音声を消そうとするエバラギ。笑いを抑えるダカザキと少し哀しげなトンチギ。
「わ、わかった、確かに本物だ。って、これは訳さなくていいから」
「機能を停止すれば大丈夫です。あの、私、ただお手伝いがしたくて」
「あ、ありがとうトンチギさん、これは使わせてもらうし、それなりのお礼はできると思うよ。でもこれから編集だからさ、ちょっと戻って、ね、ね」
エバラギはトンチギを部屋からでるよう促した。トンチギは不満げではあるが、部屋から出て扉を閉めた。
「はあ、はあ」
「ひゃあ、トンチギさん、先輩に気があったんだ。にしても意外な特技っすね。そんなすごいもの作れるとは」
「ああいう女は苦手なんだが、助かったよ、さてと」
エバラギは少しプログラムをいじってみた。操作がおもったより容易で、エバラギだけでもなんとか使えそうだ。
「さて、映像を解析して言いたいことを的確な言い回しに変えられるのか、やってみるか」
「んじゃ、まず試しにアマリリ議員からっすね」
『アベノ総理じゃなきゃダメなんです、アベノ総理でなくなったら二ホンは終わりです』
(ホンネ:アベノ総理じゃなきゃ私はユウユウアールの収賄罪で逮捕されちゃうじゃないですか。アベノ総理でなくなったら私も秘書も終わりなんですう)
「お、おい」
「確かに本音っすね。アマリリさん2200万だか賄賂もらったの仮病で誤魔化して。アベノ総理は庇ってたけど。イシババさんとかなら庇わないし」
「ちょ、ちょっと時期ずれだが、元防衛大臣ヨネダ・レイミはどうだ!」
『アベノ総理こそ、我々の望むニホンを作り上げる方です、戦ってこそ、ニホン人!』
(ホンネ:アベノ総理じゃないと戦争にならないじゃないの。もちろん私は戦場なんか行かないわ!白い帽子かぶって制服着て、もちろんスカートはミニよ!ニホンの総司令部でカッコよく命令するんだから!)
「ヨネダさんらしいっちゃ、らしいですねえ。“戦争して人類の霊的進化”とか言ってたし、俺は嫌ですけど」
「つ、次だ、次。ミズダ・ミャクミャク議員」
『アベノ総理で居ていただかなければ、ニホンは滅びるんです。ハンニチ・サヨクに対抗しなければ、キリッ』
(ホンネ:アベノ総理がいなくなったら、私は比例を外されてまた隅に追いやられるのよ。理屈っぽいリベラルどもに、また論破されて馬鹿・阿保・能無しって虐められちゃうのよう)
「まあ、ミズダさん憲法の基本どころから、法律って何か俺より理解してないっつうか。今の立憲主義、民主主義国家のニホンでも独裁国みたく上が勝手に法律を作れるって思ってるらしいですから」
「くそう、いっそ学者ならどうだ、ヨツウラ・ハリのコメント」
『アベノ総理が破れたら、ニホン中のスパイが一斉に活動しだして、取り返しのつかないことになるんです。とくにオーサカがやばいんです』
(ホンネ:アベノ総理が破れたら、ニホンの学者たちが一斉に私を攻撃しだすのよ。似非学術誌にしか論文発表してない学者もどきって言われるのよ。特にオーサカのハママ・ノリコとか、ジャーナリストのカンダノとかに)
「まあ、スリーパーセルとかいい加減言うなって、さんざ叩かれてましたからね、ヨツウラさん。なんつうか虐めは悪いって思いますけど、知ったかぶりの上から目線で言われて、しかもそれが的外れっていうなら嫌われても仕方ないかもって思いますよ、俺も」
「だ、だれかまともな演説はないのか」
エバラギは焦った。こんな調子ではどれもこれも応援どころか、逆にマイナス。アベノ総理にとっては北朝鮮のミサイルよりも脅威となりかねない。
「うーん、本当に堂々と言えることがあったら、もう誰か言ってると思いますけど」
「正直、公正ですら、使用禁止ワードになりかけたからなあ。モリモリ・カケカケとかで文書の隠蔽とか捏造しまくりって言われたしな」
「だいたい経済ではアベノノミクスはいつ庶民まで成果が来るんだって言われるし、労働改革では残業代なしで働け働けになるって言われるし。大学への予算とか減らして若手研究者は出ていくは、コーチ県立大学の図書館は蔵書棄てるわ、論文も博士も修士も数で韓国に抜かされて技術立国からダダ滑り間違いなしって揶揄されてるっす」
「年金は減ってくわ、介護認定の要件厳しくなってサービスは受けられない人が続出するわ、障碍者の雇用しなきゃいけないのを官公庁が誤魔化した挙句、きちんと障碍者が働いている作業所への補助金は減らすわだしな。おまけに妊娠してると今年から病院で診療代に妊婦加算とかかかるって、何考えてんのか、少子高齢化進める気なのかよって」
「あー、褒めようがないってのが本音なんじゃ」
「うー、子供っぽいけど自分のやりたいことに打ち込む人なんですとか」
「でも国民も党員も望んでる人、あんまりいないでしょ、憲法改正なんてさ」
二人は再び頭を抱える。
数分後、エバラギが突然叫びだした。
「悩んでも無駄だ!全部嘘でも捏造でもいいじゃないか、適当になんかオマケでもつけて流そう!」
悩みすぎて頭のネジがどこかに飛んでしまったらしい。ダカザキもハジけた。
「そうっすね!どうせ皆、捏造、偽造、隠蔽してるんっすから、上手くやればいいんですよ」
「そうだよ、は、は、は」
「ははは、っす」
二人は半ばヤケクソだ。
「あ、そうだ、トンチギさんのプログラムどうします?」
「あー適当に言っておくか」
エバラギはUSBメモリを外し、部屋から出て行った。
「はあ、やっぱり使ってもらえなかったのね」
トンチギはため息をついた。
「パクパクさんにDMで相談したら、“言いたくはないけどジコウ党では無理じゃないか”って返信されたし、エバラギさんの反応イマイチだったしね」
エバラギから返されたメモリをみながら、パソコンの画面をみる。
「まあ使ってもらえないんなら売ったっていいわけよね。事務所のパソコン使ったわけじゃないし、パクパクさん“よければ買い取りそうなとこあるよ”って言ってたし」
マウスをカチカチしながら、トンチギはつぶやく。
「うまくいけば媚売りのバカ女しかチヤホヤされない職場から抜け出せるかも。ふふ、私の能力を正当に評価してくれるところに転職したほうがいいわよね、威張ったオヤジどもはもう沢山だし。パヨパヨだろうがハンニチだろうが、きちんと扱ってくれるところなら、ね」
一人、暗闇でトンチギは微笑んでいた。
一週間後…
駅の改札で20代半ばの男性二人がスマホをいじっていた。
「おい、これおもしれーよな」
「ああ、“ホンネちゃん”か、俺もダウンロードしたぜ、100円かかったけどよ」
「あのジコウ党のエントウだっけか、ソンカ学会派のトンヤマがいってたオキナワの応援演説のホンネ、笑っちまったよ」
「だよな、『タマギギさんは何のために立候補ですか、アメリカと話すとかコンサートするわですよ!親分のオザワンはオキナワに豪華な別荘があるんです‼(ホンネ:タマギギは米軍と対等に話すと宣言するわ、ギターで反骨の歌を弾き語るわ、カッコよすぎだ!こうなったら、親分オザワンのことで陰謀論流すしかねえ、しかもネタは別荘のコトぐらいだー!)』ってんだろ。ジコウ党議員だって別荘とか持ってんのに、他人のこと言えんのかよ。しかもその別荘の動画もデマで訴えられてんだろ、なっさけねー。だいたいヘンノコ賛成に寝返ったナカインマ元知事なんてリゾートホテルもってんじゃん」
「ナカインマのホテルにヘンノコ反対の奴等を排除するのに駆り出された機動隊員が泊ってるって話だぜ。税金でリゾート泊るのかよ、しかも年寄りだろ、座り込みしてるやつって」
「ああ、機動隊員の『こんな反対派の暴力受けました!』て台詞、ホンネちゃんにいわせると(ホンネ:車いすのババアがぶつかってきやがって!)てんだからな、どっちが悪役だよ」
「“ホンネちゃんのいうことはいい加減だ!”とかいうジコウの議員もいるけどよ、ジコウのがいつも嘘ついてんじゃん」
「公文書とか役所の連中がいっつもインペーとかネツゾウとかしてんだろ。俺らなんて役所に出す書類、ちょっと間違えても怒られて。下手すりゃ罰金とか余計な税金とられんのにズルいよな」
「だからよ、ホンネちゃんのが本当なんだろ、嘘つきに嘘つきって言われてんだからさ」
「だよなー。それにホンネちゃんのが言うことおもしれーし」
「下手なコントより、笑えるぜ。これで100円じゃ、安いって」
「エバラギ先輩、ヤバいっす、ホンネちゃんが出回ってるっす」
ジコウ党会館、夜更けにほかに誰もいない会議室で、明かりもつけずにエバラギとダカザキはひそひそと話していた。トンチギ発明の例の言いたいこと翻訳機“ホンネちゃん”が格安スマホの課金アプリとして登場したのである。しかもゲームでもないのにあっという間にダウンロード数は万単位となっていた。
「まさか、トンチギさんがホンネちゃんを課金アプリにするとはなあ」
「素人でも課金アプリってできるんっすね」
「バカ、どっかの業者が中に入ってるに決まってんだろ。100円としてトンチギさんの取り分が30円ぐらいかもしれんが、ダウンロート数が半端ないし」
「なんか10万ぐらいいってるって噂も」
「30×10万だと300万か、いやそれ以上かも。ニホン特有のややこしい言い回し、キョートの“ぶぶ漬け”とか、そういうのを理解したい外国人とかもダウンロードしてるって話だし」
「うわ、それじゃすごい数っすよ」
「そうだな、下手すりゃ、世界中でニホンの本音がわかるってわけだ。ってのはホントはかなり不味いんだよな。ああいう演説やら記者会見のホンネがバレるってのは」
「どうしましょう、俺ら、やっぱトンチギさんを引き留めといたほうがよかったんすかね」
「まさか、あの後すぐ辞めるとは思ってなかったからな。ま、いいか」
「え、いいんすか?」
「どーせ、俺たちがあのプログラムをみたって証拠はないんだし、トンチギが俺らに見せたって主張したって知らなかった、で押し通せばいいさ」
「そ、そうっすね、ケーサン省を見習って、書類とかいちいち作ってなかったし」
「メモにも残してないから、トンチギが俺たちにあのプログラムを持ってきたなんて、黙ってりゃわかんないさ。いざとなりゃあの日の日誌を今から書いちまえばいい」
「捏造、隠蔽は構わないんっすよね、ジコウ党は」
「そ、そうだよ、書類ないから、“悪魔の証明”なんだよ、ハハハ」
「ハハ、それでいいんっすよねえ」
引きつりながら二人は薄暗い会議室で笑い続けた。
ホンネがバレるといろいろと面倒なことになりますねえ。”ホンネちゃん”は親しい方には絶対に使わないでください。あ、こちらに向けないで下さいぃ。