表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪は儚く壊れやすい故に  作者: 縞馬檸檬
2/4

嵐の前触れ

誤字脱字あれば教えていただけると幸いです。拙い文章ですが読んでいただけたら幸いです。幸いです。

 

「じゃ、皆んな寄り道せずまっすぐ帰宅すること…気を付けて帰るんだぞ。」


 担任の谷村先生がそう締めくくり、日直の生徒に目配せで合図を出すと日直の生徒は起立の号令を掛けそれに合わせて私達も起立をして日直の掛け声に合わせ礼をして学校での1日は終わりとなった。



「薫ちゃん、かーえろ?」


 席に一度座り直し机の中の教科書類を片付けていると帰り支度を済ませた雪が直ぐ横で私の顔をしたから覗き込む形でそう尋ねて来た。


「はいはい…直ぐだから待ってて。」


「うん!」


 私がそう返事をすると雪は笑顔で頷く。


 そんな彼女の仕草を見ていると自然と気が緩み思わず私まで微笑みを浮かべてしまい雪を待たせぬよう帰り支度を済ませて雪と共に教室を後にした。


 談笑しながら私達は校門を抜け、その際に校門前で生徒達を見送っている教員にさようならと挨拶を交わして帰路についた私達は歩きながらそれぞれの家の方向へ別れる交差点まで向かった。


 その交差点に着くと私達は互いに、また明日…と別れを交わしそれぞれの道を歩いて行き、少しして私は雪が向かった道へと身体を向け私は離れ行く雪の背中を見つめながら昨日の出来事を思い返していた。








 

 それは父からの一本の電話からは始まった。


 携帯電話が鳴り、液晶に表示された父の名前を確認して携帯を手に取り通話の所を触れた。


「……もしもし?」


「…プラス5。」


「…はぁ、、26。これで良いか?てか携帯にかけてるなら必要無いだろ…」


 テーブルに置いてあるコーヒーの入ったコップを手にし、一口飲み溜息を吐いて答える。


 父からの電話の時は毎回こうなる。


 突然のプラスマイナスと数字を言われそれに確実に答えなければ連絡はそこで途絶えて電話番号ですら直ぐに変えるのだから本当に迷惑極まりない…それにこの答えはルールを知っていれば誰にでも答えられるのだから意味があるのだろうか…。


「まぁそんな事言うな、ちょっとした決まり文句の様なものだよ。」


「それで、要件は何?定時連絡なら入れただろ?」


「状況が変わった。」


 手にしていたコップをテーブルに置きもう一度溜息を吐いた。


「何が起きた?」


 父のその一言で事が良く無い方向に変わったのだと直感した。


「まだ何も起きてはいない…だが、天野組の周りを怪しい連中が嗅ぎ回ってるのが分かった。もとより雇い主の嬢ちゃんからは表沙汰に出せないような奴等が天野組のご令嬢を狙ってると言う話は聞いていてね、そして今日それらしき奴等を真琴が見つけた。」


「そいつらの特徴は?」


「そうだね…マスクにサングラス更に帽子を被っていた男が3人で服装も市販に良く流れている服で特徴と言う特徴は無かったと真琴は言っていたよ、探すとしてもそんな人達街に沢山いそうだね……まぁ、1人を除いてね。」


「そういうのはいい…早く教えろ。」


 回りくどい言い方に苛立ちを感じ思わず棘のある言葉使いになってしまい、それを電話越しで聞いている父は笑いを堪えているらしく更に苛立ちが増して行く。


「…おい。」


「まぁまぁ、落ち着け薫…冴島の人間はいつ如何なる時でも冷静沈着でないとな?それを忘れちゃあいけない。いいな?」


 父からの有難い御高説に舌打ちで答えると少しは悪いと思ったのか謝罪の言葉を言い咳払いをして真面目な声に変わった。


「今からその男の画像を送るから確認してくれ…それとお前には一つ覚悟してもらう必要がある。」


「覚悟?」


「人を殺める覚悟を…だ。いいな?」




 人を殺める覚悟…。


「そんなのとっくに出来てる。」


「そうか、なら良いんだ…ただ、今回のその男は確実に今までの奴等とは違う。確実に人を殺しているし私達冴島の人間よりも更に深い深い闇の中で生きている人間だ。この男と対立したら捕まえるなんて考えるな殺せ。さもなければ薫…お前が殺される。」


 父のその言葉は余りにも冷たく、そして俺を心配する様子が伺えた。


「父さんは、その男を知ってるのか?」


「……お前らがまだ小さい頃にな、一度見た事がある程度だ。」


 あの父がそんな事を言うのだから相当なんだろうと予想出来るが、いまいち実感が湧かなくて困っている。

 父は未だに現役で今の所手合わせで一度たりとも勝てた記憶がな、それどころか勝てるビジョンが思い浮かばないほどだ。



 それに冴島の人間よりも深い闇に生きているって言うのも実感が湧かない…冴島家は昔は幕府から始まり現在は国家…政府の下で様々な裏の仕事を引き受け、その技や伝統を代々受け継がれて今もなお続いている家系だ。


 暗殺、護衛警護、密偵など上からの指示とあらばそれに従い任務遂行する言わば現代に生きる御庭番のような存在だ。そして困った事に突然暇だと呼び出されれば話し相手から技の披露をしなければならず本当に何でもやるのだ……


 考え込んでいた事に気付き思考を一度立て直し父に質問をしようとするが。

「……おい。」

 既に電話は切れていた。


 繋がっていない携帯をベッドへ放り投げパソコンの前へ進むと早々にメールを確認し、件の男の写真を確認した。


 写真の男はどこにでもいるような少しガラの悪そうな男でスーツを着て車の近くで周囲を伺っている様子が映し出されていた。


 それにしても父が昔見たと言っていたから壮年の男だと思っていたが予想外な事にその男はどう見ても二十代後半程度で若い男だった。


「…もう知らん!!」


 ごちゃごちゃになった思考を停止させベッドにダイブして目を瞑る。

 そのまま手探りで照明のリモコンを操作して明かりを消し眠りについた。



 それが昨日の出来事だった。


 そしてそのモヤモヤと胸のざわめきは朝になっても収まらず今に至る。



 私は今現在父の命令で天野組を仕切る天野茂信という自営業をなされてる方のご令嬢、天野雪の身辺警護を任されている、が。面倒な事に上からの命令で表立って護衛するなとの事で私はこうして雪の学友として近付き任務に就いている。


「今日も異常なし…か?」


 私は雪と別れた後、こっそりと雪を追跡して天野組の迎えの車に雪が乗るまでの行動を毎日確認していた。

 雪は実家の事を周囲に隠している為こうして人通りのない所で迎えの車に乗っている。


 私が雪の監視を続けていると、今日も予定通り天野組の車が待機していた。

 雪が車に近付くと運転席からはいつも迎えに来ている顔の傷がチャームポイントの笑顔が素敵なお兄さんが現れドアを開け雪を中に入れる。その間助手席からは体型がお相撲さんのようなサングラスが似合うちょいワルオヤジが降り周囲を警戒している。


 警護が必要なのか疑う瞬間ではあるが組の人が迎えに来た事で外で私に出来る護衛はほぼ終了に近い、その場を離れようとした時私は小さい違和感に気が付いた。


 車は普段と変わらないものだが何かが違うと確信が持てた私は車をよく観察し、それに気が付いた。


「車のナンバー…天野組の持ってる車には…っ!!」


 その事実に気付いた時には車は既に走り出していた。とにかく少しでもいつもとは違う不完全事項があるならば動くしかない。


 私は全力で駆け出した。


 やな予感がする…。

 :

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ