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人生を暮らす一種の作戦

 もう学校を卒業したのだから、何かを覚えるなんてまっぴらだという理由だけで勉強しない人は多い。数字を覚えるのは苦手なんて言わないで、人にも是非勧めたい。特に経営に携わる人には必須科目だと思う。


 先に10件の数字を例として挙げた時に、(その方が分かり易いと思ったからなのだが)数字を覚える事の経済的な価値や生活への便利さや人から高評価を得られる事や、他人より仕事が速く出来るとかーーー、を中心に説明した。確かにそうなのだ。

 けれども、筆者が本当に言いたい処は別にあって、実はそんな損得勘定や他人へ偉そ張る為ではない。大袈裟に言えば、自分がどう「生きたいか」に掛かっていると思う。


 再度、先の国家予算が107兆円の話に戻る。この数字を知っていればこそ、(比較して)トヨタの時価総額が40兆円と聴けば素直に「驚く!」(=驚ける!)事になる。そうでなければ、単に40兆円と聴いても「ふん~、そんなもんなの?」と見当が付かないから、ボンヤリするだけ。幼稚園児や或いは犬に聞かせるのと変わらないから。


 筆者はこう考えている:「驚いて・感心する・感動する」機会が沢山ある人生は新鮮で、ボンヤリ単調に過ごす人生と比較して、豊かに感じるのではなかろうか。この部分が、このエッセイのポイントである。思い出してご覧よ、初めてのセックスは新鮮な驚きと感動じゃなかったか? 


 数字を覚えたからと言って、必ずしも速効的に社長になれたり出世したり出来る訳ではない。また数字を覚える事に何も高邁な哲学がある訳ではないが、人は頻繁に手持ちの数字と比較して「生活し・生きている」と先に紹介した。そして数字があるからこそ比較に繋がり、人の「思考・思索」に発展して、結果として「驚きと感動が生まれる」のも示した。


 長い人生が一瞬一瞬の積み重ねとするなら、(基準となる数字を)沢山手持ちしている方が、それに応じて感動がより多くなり思考も深まり、豊かな人生に繋がる。これは同じ時間内に、人より沢山生きる事を意味しないだろうか? 人より「長生きする」のと同じ意味合いになる。

 数字を覚える事は、上手に人生を暮らす一種の作戦だと筆者は考えていて、(本当は)損得を云々するのが目的ではない。人として豊かに暮らすには、「覚える」という多少の努力が要るのだ。



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