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日曜日に図書館へ行った

 食事をしながらの和やかな場となれば、当然相手はゲストである筆者から日本の事を訊きたがった。それしか外に話題がないようなものだ:

「ヘエ~、神戸に住んでいるの? (人口は)どれくらいの街なの? (シンガポールより大きいのかな?)」

「――――? うん、大きな都会だよ。シンガポールと同じくらい」

「会社は大阪なのね? どれくらいの都市なの?」

「―――? うん、大きいよ」


 今に思えば大した会話ではない。けれども筆者は内心で大汗をかいていた。日本男児一代の恥辱と考えた。真面目で若い年頃だったから、自身の向上に努力を惜しまず、何かにつけ一流の人間になりたい(平たく言えば、世に出たい)という気負いがあったーーー、としても不思議ではない。

 だのに、あきれた事に、ニュートン方程式は知っていたが神戸市の人口を筆者は皆目知らなかった。大阪府の規模も、知らないのも同然だった。学校で良い成績だったとしても、実は世の中の常識を何ひとつ身に付けていない井の中の蛙、ビジネスマン以前だった。Mrエリートは、大変恥じたのである。


 恥じを繰り返すまいと密かに誓った。帰国後、早速実行に移した。常識と教養を急速に増加させる一番手っ取り早い方法は何か、と先ず考えた。


 一から小学校へ入り直すのは時間が掛かり過ぎたし、会社が許可する筈がない。図書館で万巻の書物を読破するのは視力に悪い。最も安直なやり方だったが、人の思いつかない名案を思い付いた:ただ単純に数字さえ覚えればよい、と考えたのだ。後になって考えても確かに合理的だったと思う。

 (ネットの無い時代だったから)日曜日に図書館へ行った。



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