干上がっちゃうわ
その夜配偶者に話すと:「二羽はツバメでつがいなのよ、きっと。倉庫内に巣を作ろうとしているわ。目下環境の安全を確かめている最中で、貴方が安全な人間かどうかも観察しているのよ。
でも、連休が明けると貴方一人の倉庫じゃないし、赤ちゃんが出来てピイピイいうのは良いとしても、周りを糞で汚すのが問題よ。第一、普段は土日の倉庫は締め切りになるから干上がっちゃうわ」、と説得力が高い。
紀州和歌山の山処の育ちの女は、ツバメの生態を含めて、野山の事を百科事典みたいに知っていた:昔は家賃を取らずにツバメの夫婦を同居させていて、巣がヘビに狙われた時には人命救助した事もあるそうだ。
不思議にツバメは人が身近に居る処に好んで巣を作り、同じ敷地内でも人が殆ど使わない場所や建物には作らないわ、ツバメは自分と一緒に暮らす人をまるで選んでいるみたいにみえる。ツバメが巣を作る家は選ばれた家で、幸せが来るのだと女は筆者へ教えた。
秋になれば南の島へ帰るから、ツバメは決して人に飼われることはないけれど、人間を好きなのだと女は話した。好かれるのは筆者だけに限らないと知って、少しがっかりした。
シーズンの夏の間だけだから、筆者一人なら糞で床が汚れても構わないと思ったし、土日であっても倉庫のシャッターを開けてやる為に、一人出社しても構わないと思ったのだがーーー。




