忍者の手裏剣
次の日、前の日とそっくり同じことが起きたのです。夕方になって、またシャッターを開けてやりました。いや、更にプラスがありました:この日は昼間の実験中に筆者の身の回りを二羽が何回か飛び回ったからです。バタバタするのではなく、スイスイと来るのです。筆者の身体や倉庫の柱にぶつかりそうになると身をひるがえします。女には持てないが、オレは案外と小鳥には持てるんだーーー、と悪い気はしない。もっと持てるかと思って、小鳥が近くに居るときは、手や足を動かすのに意識して鈍重な身動きにしました。
相手はこっちが年寄りと分かっている風でした。人間社会の場合と似ており、この人間は勘トロでヨタヨタで知能は自分たちより低級だ、と小鳥たちはそう正しく判断したにちがいありません。からかうみたいに、筆者の頬すれすれに空を切ってシュッ!と飛ぶこともありました。危ない!まるで忍者の手裏剣。無論、こんな遊びをするのは二羽の内でメスの方だと思います、何せ筆者はオスですから。
三日目の朝、十時頃に出社してシャッターを開けようしてふと近くの電線を見上げると二羽が2m程の間隔をあけて止まっているではないか。シャッターを開けようと鍵をガチャつかせていると二羽が筆者の周りを交互に飛び交い始め、半分ほどシャッターが上がった時に、案の定二羽がスルリと先に倉庫内へ飛び込んだ。




