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◎第八十六話:「起業」の話
◎第八十六話:「起業」の話
筆者は起業し、20名程度の小規模な会社ながら関連業界でそこそこの地歩を占めるまでになれた。眺めて方法を教えて欲しいと言われる時がある。大抵は興味本位だが、稀に真剣な面持ちで訊かれることがある。一度エッセイで、起業した経緯(=「亀が空を飛ぶ方法」)を紹介したが、やり方がどんな業界に対してもあてはまる訳ではない。
未だデートする程打ち解けた仲ではないが、知り合いのS子からそう訊かれた。はにかみながらも真剣な眼差しが光っていたが、背丈が低いせいで実際より一つ二つ若く見える。筆者の通うスポーツジムで受け付けのアルバイトをやっている21の大学生である。高専経由の進学だから頑張り屋である。成績も良いのだろう。
建築工学を勉強していて、将来独立して建築事務所を経営してみたいと言う。花の乙女が、男よりもそっちへ関心が高いようだから決して古風な女ではない。レストランの開店ではなく、建築工学の分野で起業を考えるのが女だから、流石に今の時代ではある。




