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人事課長は四十過ぎ

 私は助教授の部屋でも同じ話を繰り返した。五十前の助教授は、懸命に話すこっちの顔をじっと眺めていた。やがて、穏やかに微笑しながら「若さがうらやましい」の意味の事を言った。言い方がしみじみとしていたから、自分の人生と重ね合わせたのだろうか。歳月を経て自分が失ってしまった情熱を、生真面目な学生の青さの中に見たのかも知れない。


 助教授は考えた末、S社という二部上場の小さな工事会社を紹介してくれた。少なくとも造船会社ではなかった。


 大阪の会社で会社四季報と言う本にも載っている。自分なりに調べてみると過去何年にも渡って大きな収益を上げ、それに見合って株主配当も高率であった。有名ではないが何となく将来性があり、優良会社に思えた。小規模だから、手早く出世して社長になれそうである。助教授は懇意にしていたS社の人事課長を大学へ呼んでくれた。研究室内で、いわば面接試験を行うみたいな形になった。


 名前は忘れてしまったが、人事課長は四十過ぎで、穏やかで感じの良い人柄であった。私は教授・助教授に話していた自分の人生の夢と希望を、人事課長へ三度目に熱心に繰り返した。課長は話を始終黙って聞いていたが、熱の篭った話が終わると、暫く私の顔を正面からつくづくと眺めた。斜めからも眺めたが、鑑賞に値する顔ではない。

 が、口を開いた時、人事課長は思いも寄らぬ言葉を与えた:

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