安心して社長になれる
外にも定年退職者のくせに年収950万円を稼ぐ猛者も要るが、切りがないので省略する。
次に彼らに負けず劣らず高給取りの筈の筆者だが、筈だけであって、会社設立以来自分の給料の正確な額を知らない。筆者の配偶者も同じ会社の経理部(=給与係り)で働いているが、この女はずっと以前から、「私の給料は全額私のもの、夫の給料も全額私のもの」と考えるタチで、知らない内に夫の給料全額をかすめ取っているからだ。
年中無休で働く夫へは、「生かさず殺さず」の雀の涙ほどの小遣いを呉れてやれば御の字と考えている。年中無休なら小遣いも使う暇が無く、雀の涙でも多すぎる、それの証拠に夫は今でもちゃんと元気で生きているじゃないの、とうそぶく。この残酷さが罪にならないのは、我が国の夫婦制度の欠陥である。
会社で筆者のやる仕事は色々ある。最近は倉庫にある中古の旋盤とフライス盤を自ら操って機械部品のサンプルを次々に作っている。機械の運転を修理係のT君から四ケ月前に教わったからだ。修練を積んで今や技量は師を凌ぎ、並みの職人以上だから転職先に絶対困らない。
社長が経営をやらずに職人仕事をやっていて転職を考えるなんて、会社は一体大丈夫かと人は思うかも知れない。それは今なお世間で支持を集めている見方だが、なに、忙中閑ありの言葉がある通り、会社がそこそこ順調なら、社長というのは閑だらけなのだ。
ひょっとして将来間違って社長になったら多忙で大変、と心配する向きがあるかも知れない。だから、この知識を知っておくと安心して社長になれる。




