ブレーキを掛ける
もし、事情を知らない誰か第三者がK君の一部始終を眺めていたら、社員をこき使い管理もせず、と会社はブラック企業と非難されるかも知れない。そう言われたら、筆者は一体どうしようかと思う。
営業マンだから、月間の(低めに設定された全営業員に共通数字の)最低販売ノルマ(最低限度の売上金額)は存在する。K君は無論ノルマを軽く超えている。
超えたら(K君の例のように)ウチでは何をやっても自由、という事になっている。もっともっと製品を売ってもいいし(=システムとして賞与が幾何級数的に増加する)、仮に喫茶店で昼寝をしていても構わない(=読書好きには、これがこたえられないらしい)。何か遣りたければ(無尽蔵という訳には行かないが)、会社は資金も出してやる。
経理から報告を聞いたが、昨年の彼の年収は一千万円を軽く超えている。ウチの業界では珍しいだろう。しかし、なあに、筆者だって新製品開発実験でそれ以上に頑張っているのだから、筆者を超える事なんてない筈だがーーー。
K君は純粋に仕事を楽しんでいる風に見える。「体を壊すなよ」と筆者が時々ブレーキを掛ける。ノルマを達成後の余った時間を、もし彼がなおかつ更に製品を売る事に使うならば、年収は2000万円を越すだろうと思う。
けれども彼はそうしない。




