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◎第八十四話：「天国の会社」の話

　天国は死後の世界ではない、というのはウチ会社の事かも知れない。以前のエッセイで一度紹介したが、ウチの会社には上役も下役も居ない。全員が上役であり下役でもある。会社が小さいから部長や課長や幹事長を作っても、管理する部下がいないからである。

　人に訊かれたら何時もそう答える事にしているけれども、上下関係の組織を作りたくないからというのが本音だ。革新的と自慢する程の事ではないが、長年やって、今の処上手く運営されており社員へ冷酷でもないから、それほど間違いではないと思う。ウチみたいな経営スタイルの会社は外にめったには無い。

　世の中には、完全にマニュアル化された会社、例えばマクドナルドのような会社もあれば、組織の三菱と呼ばれるような会社もある。小さくても、ささやかに確実に利益を上げる会社（例えばウチもそう）もあれば、利益何千億円・何兆円の華々しい会社もある。それぞれの持ち場を確保して生きているのが、資本主義・自由主義の世界だ。

　会社を経営する上で一番の面白さは、正解が一つではない事だ。組織の三菱から見れば、ウチは出鱈目な会社という事になるし、マクドナルドから見れば、アレは会社と呼べないと言われそうだ。