結婚のメリット
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「さっき少子化対策と言ったけれど、方法はあると思うわ」
「どんなーーー?」
「多分唯一の方法よ。男の給料をうんと引き上げてやることよ。昔みたいに男一人の収入で家族が養えるだけの給料があれば、働く女なんて多分殆どいないと思うわ」
「ふ~ん」
「男の派遣社員やパートをランクアップして正社員に昇格させて、賞与も十分払ってやればいいのよ。少子化が女のせいみたいに考える人が多いけれど、間違いよ」
「ーーーー」
「本当は派遣で男を安く使う企業に責任があるのに、問題を女にすり替えている」
「でも、全員を正社員にしたらコストを上がって儲からなくなるーーーと会社は言うよ。工場が人件費の安い海外に逃げるかもーーー。失業が増える」と、こっちは企業を擁護した。
「会社の儲けはその分確かに減るけれども、赤字にならないなら程度なら、そうさせるのが政治よ。夫の収入が充分なら、女は安心して家庭に入れるし子供も増やしたいと考える。女は大学で学んだことを本当にやりがいのある事の為に収入を度外視して生かせるわ」
「ーーーー」
「今みたいに、多くの男が収入の低い派遣労働とかパート仕事なら、女は結婚するのをためらうし、子供だって作ろうとは思わない。当たり前じゃないの! 第一女は何のために結婚するのよ、子育てもしながらシャカリキに働かなきゃならないなら、結婚のメリットがないじゃないの!」
「うむ、まあーーー」
「ついでに言えば、最近マスコミを賑わす悲惨な事件は、大抵「無職か低収入な男」が原因よ。男の収入が少ないのは、それ自体が社会不安に繋がるわ。そういう生き物なのよ、元々男というのは」
「なるほど、一理あるーーーー」
「女は男よりもっと損得の現実派よ。男が安月給なら、しがみ付く理由がないから女は簡単に離婚に走れる。男の収入が高ければ、多少の不満があっても女は男を手放したがらないものよ、損だから。離婚が減って子供が増えるわ。基本的に男の収入が女より高くなるようにすべきね。だからこそ第一歩として、派遣や臨時社員を無くすべきなのよ」
「昭和の時代みたいだーーー。少子化というのは問題の根が深いな」




