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宇宙の彗星ではない

 筆者は二人の女の間で迷った。随分考えた末に結局L子を選択しなかった。問題は二つあった:

第一の理由は現実的なもの。当時筆者には付き合っていた七つ年下の女Y子(今の配偶者)が居た。初々しい態度で終始し、筆者へ寄せるひたむきな愛を裏切る事は出来なかった。L子もその存在を知っていて、敬次郎の場合みたいに、筆者の前で自分より年下の女を「Y子」と呼び捨てにした。嫌味は少しも無く、二人の共通の妹を呼ぶ風な親しみがあった。


 第二に、L子は魅力的な女ではあったが、妻として「持ちきれない」気がしたのだ。いや本音を言えば、そんな言い訳は無理に作った負け惜しみみたいなもので、どうにでも解決出来る問題だ。実を言えば、L子側にも立派に彼氏がいたのである。


 筆者に面と向かっては言わなかったが、L子はそれを公にしていて筆者の耳にも届いていた。若い実業家との事で、少なくとも筆者より金回りが良かった。年齢・風貌を含めて、ここではこれ以上の詳細は重要ではない。

 テイファニーのミス・ホリーと同じで大富豪しか相手にしないのだ。草津温泉のスキーも彼氏のおごりらしかった。


 L子を選択しなかったと書いたが、双方で選択出来なかった。それでもお互いに強い磁力を感じて惹かれ合った。女とは、卓球が下手でどこか不器用な男に惹かれるものと聞くから、そうだったろうか。互いに接近しながら、近づきすぎると用心して離れた。態度を決めかねながら恋のさや当てを何度か繰り返し、話しは実に上手く噛み合いながらも、飛躍的に複雑になるのを双方で避けた。


 宇宙の彗星ではないから、二つが衝突して合体することは無く、最終的にすれすれを通過して離れ去った。そういう運命だったと人は言うが、運命というのは実は自分の意志なのだ。

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