ピンポン
何ケ月かのレッスンが過ぎて筆者と同僚I君の二人から声を掛けて、女先生のノリちゃんとL子へのお礼を兼ねて、4人で合同デートをした事がある。いわゆる合ハイで、 日曜日に一緒に六甲山のハイキングへ誘った。ハイキングと称したが、その実道の途中で生きたヘビも登場した本格的な登山だったから、疲労困憊にさせされた女二人は、退屈どころではなかった筈だ。
下山した後、三宮の高級レストランで大いに馳走して女二人の機嫌を取った。楽しい思い出である。
筆者が社内でL子と気軽に口をたたくようになったのはそれ以来である。同時にL子も筆者を憎からず見直して、それまでの「どこの青びょうたん」から、薄暗い処でなら「好男子に見える」までにランクアップしてくれた。向うから歩み寄って「見慣れるためかしらねえーーー」と筆者にそう漏らした時、秘密を打ち明けられた気がした。
その後、夏の夜に仕事帰りにL子と二人だけで卓球場へ寄り道して、遊び興じる事が何度かあった。先の六甲山のデートみたいに一年に一回の楽しみや、三年に一回の海外旅行よりも小さなイベントを小まめに入れたほうが、男女の幸福感は深まるものだ。ピンポンの平均スコアーは6:4でL子が何時も勝ったが、軽度の不幸に筆者は耐えた。




