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週一
ある時筆者は初めての経験で、海外出張を命じられた。出発に二ケ月の猶予を与えられたが一大事で、急いで英語会話の個人教授の必要に迫られた。困惑した。
当時ベルリッツという優秀で名高い語学教室が市内にあったが、月間の授業料が給料を超えるほどベラボウだった。会社に掛け合ったが、そこまで社員の教育には熱心ではなかった。他の街中の安直な英会話教室では間に合わない。
これを伝え聞いて、どんな経緯だったか忘れてしまったが、神戸女学院大学の英語の女先生を紹介してもらったのは、L子の口ききであった。
L子は何故か人が容易に伺い知れない類の情報をよく知っていて、困りごとも彼女に頼めば何らかの形で解決するのが不思議だった。同じ輸出部内で親しくしていた同僚I君と二人で、筆者は紹介された女先生の自宅に、個人教授に週一で通う事にした。




