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ふぐ毒
女同士の戦いとは別に、周りには筆者以外にも独身男子社員も多く居たが、何か気後れするらしくL子と話をしながらも遠慮気味であった。そんな男は大体において頭は凡庸だったから、正しく言えばL子にやり込められて、体よく「お払い箱」にされていたのである。
幸いと言うべきか、同じ輸出部内に棲んではいたが、筆者がL子と仕事上で接触する機会は無く、言葉を交わす事は一度もなかった。フリーテニスで対戦する機会もなかったし、遠方から時々観察をしてはいたが、自ら近づいてふぐ毒に当たって痺れるような真似はしなかったのである。
しかし嘘か誠か、ふぐの肝は猛毒だが痺れるほど味は旨いそうだ、とは生還した人から聞いた話である。




