高笑い
歯噛みするL子の負けず嫌いと気の強さは並外れていたから、「別嬪やが、ああいう女を嫁に貰うと、どえらい目に逢うぞ」と、辟易しながらささやく声が見物の男たちの中にあり、それが大体一致した見解だった。けれどもそんな見物人たちは、L子の参加によってゲームが「冴えて活気付く」値打ちには、いささかも気づいて無かった。
更に言えば、L子の功績はそれだけに留まらず、体を動かすのが好きで毎年お正月休みには草津温泉のスキー場に出かけて行き、滑りは一級クラスの足さばきを見せて辺りをうならせたと聞く。軽やかな身のこなしで雪面に描くシュプールは美しかったろうと思うが、残念ながら同道した事が無く、筆者に見る楽しみは与えられなかった。
フリーテニスで負けて悔しがる様子を隠そうともしない通り、L子は自由を愛した。業務中にも何か可笑しな事に遭遇すると、クスクス忍び笑いやアハハではなく、「オー、ホッホッ」とフロアー中に響き渡る上品で闊達な高笑いをやらかした。前代未聞の音響を初めて耳にした来客は驚いて、少なくとも10センチは床から飛び上がり、周りの大抵の人が「まさか!」とびっくりしたが、「またか!」と筆者一人がゾクリと来た。




