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胸にふくらみの無い知性の勝った女

 男の作家によって創作された女だから、ミス・ホリーが男にとって一種の女の理想像として描かれているのは当然だろうが、しかし個性が豊だから、モデルとなるような女を作家は知っていたのだろうか。ひょっとしたら自身の配偶者なのかと思わせる。

 筆者は物語フィクションは余り読まないのだがこの本は例外で、これがドキュメンタリー(実在した人物の実話)なら、もっと素敵だろうと思う。


 主人公ミス・ホリーは14歳で結婚し、その後出奔し、今や19歳でニューヨークで売れっ子の娼婦。数々の男を手玉に取りながら、寝た男は13人。大金持ちのリストの中からベストなのを選択して結婚しようと企む。極貧の幼少時代に身に着けた万引き癖を、手を落とさない理由が為に、大人になっても定期的に万引きを繰り返して腕の低下を防ぐ。


 頭が良くて、大抵の女に共通しているが、物事の本質を素早く掴み取るのに長けている。魅惑的な悪女である。先に触れたようにホリーは自分が好きだった筈の作家の卵から蒸発するように姿を消してしまう。行方は誰も知らず十年ほども後に、ニューヨークから遥か離れたアフリカ大陸奥地の村落で、痕跡らしきものがあったというのが最後の消息で、以後は何も分かっていない。

 作家はその後世に出たが、昔ホリーが呉れた高価な骨董品の鳥籠を未だに手放せないでいるーーー、そんな話である。


 原作でも映画でもそうだが、ミス・ホリーはセクシーでもなく肉感的な女でもない。事実主演のオードリーも肉体派女優ではない。むしろ胸にふくらみの無い知性の勝った女として描かれている。


 盛りの付いたアニマルみたいなのが男とはよく言われる。が、実はこれは間違いで、男にとって本当に魅力的な女というのが「あの女の体の素晴らしさは何ともいえない」という類ではないのだ、と物語は教えてくれる。そう知るのは筆者としても意外で、一つの発見だ。


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