偏屈人
無論一週間で出来るとは思わなかったが、大学卒業までにはかなりの日時があるからと楽観的に考えた。同じ暗誦するなら、どんな本が良いのか考えあぐねた。出来れば名文がよい。和文なら夏目漱石とか森鴎外とかを思いつけそうだが、英語の本となると皆目見当がつかない。
大学一年の秋だったと思うが、英語を教わっていた教師の室を訪れて、目的を説明してアドバイスを求めた。しかし意に反して適切な助言が得られなかった。突然訪れて稗田阿礼を例に引いたから、教師も流石にびっくしたようだ。
急な訪問だったから、その場で「君、この本を暗誦し給え」と即座のアドバイスが出来なかった。それでも時間を掛けて考えてくれれば、何かを後で思いつけたのではなかったかと思ったのだが。教師の授業はその後も受けた(=エラリー・クイーンの推理小説が教材だった)のだったが、教師から連絡は何も無かった。学生の真摯な熱意に応えないと知って、ガッカリしたものである。
次は、大学の二年だったかと思う。外部から講師として来ていた別の教師の英語の授業を受けた。偏屈人で、(教材の内容は忘れてしまったが)英語の文章を虫眼鏡で眺めるように微に入り細に入り分解して解説した。辞書もxxx社製を買えと学生に強要した。




