風が吹いて桶屋が儲かった
けれども事件はこれで終わらなかった。後日談があり、別の終わり方をしたのである:
先の断りの書信を返してからもう忘れた頃で、丁度一ケ月が経った時、遠隔地の英国から短いメール(英語)を筆者は受け取った。ウチの取引先の会社で、普段から懇意にしている知り合いMr.Dさんからのメールで、ちょっとした「垂れ込み」ニュースであった。
ニュースはDさんの会社のライバル社(英国に本拠を置く)に関するものだった。とても大きな会社で、その会社こそ(ウチを買収しようと画策した)と筆者が推測していた会社である。無論Dさんはそんなことを知らない。
その会社の主要人物であるMr.Oが最近解雇された、と知らせて来た。この男はその会社で、日本市場も含めて海外営業を統括する総責任者であったから、重要人物と言える。Dさんにすれば敵の失点で留飲を下げたつもりで、筆者へメールしたのだった。
偶然の符合に筆者はピンと来た;ウチがMr.O解雇の引き金を引いたのだ。その会社で彼が統括する事業は元々パッとしてなかったから、日本での買収の失敗を口実にされて、Mr.Oが責任を取らされたのだ。間違いない。
万が一にも買収に成功しておったなら、彼の手腕として会社から好ましい評価を受け、責任者としての地位の保全に功を奏した事だったろう。玉突きゲームみたいに、日本での失点が地球の裏側で一人の人間の解雇に繋がり、風が吹いて桶屋が儲かったみたいな話になった。
買収申入れのたった一通の内緒の書信が切っ掛けになって、普段あまり考えた事が無い問題について、筆者が様々思いを巡らす機会となったのは確かである。従業員の期待に応えて、100までやろうかなと思うのである。
お仕舞い
2021.9.8




