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紀州生まれ

 返事をする前に、その日自宅に帰ってウチの大株主の配偶者に話した:

 「100億円積まれても売りません!」と即座に言い放ったから、紀州生まれの蜜柑山の女は流石に大きく出たもんだ。月間の小遣いを値切り倒して夫へ渡すドケチなくせに、こんな時は度量が大きい。


 100億なら女一人で45億円が手に入る訳だから、孫の存在などほったらかしにしてもいい筈だ。なに、一族の血を引いた孫にしても、おすそ分けされて小遣い10万円もやると言われりゃ、生徒会長の席を喜んで辞任するタイプだ。なにせ父親似だから。


 少し考えてから、「買収希望はひょっとしたら、ヒーチャン(恥ずかしながら筆者の名前)のあの新製品の特許が欲しいのじゃないの? だったら、あの3件をまとめて売って上げなさいよ。10億円くらいで売れるわ」と、大いに気前がよい。自分が発明したのでなければ、この女は気前がよくなり過ぎるタチだ。

 10億円は安すぎると、こっちはやや不満である。


 相手は恐らく、筆者の歳を知っており「代替わり」の時期を狙ったに違いない。しかし皮肉な事に、ここの創業者は自分が「シャンとする」為だけに(=生きがいを求めて)会社を経営しているのであって、案外お金に無欲なのである。配偶者も似ていて、大金を貰っても「使い道がないじゃないの!」と再度喚いた。こういうのは、交渉相手として最も扱いにくい手合いだ。


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