◎第八十一話:「買収」の話
◎第八十一話:「買収」の話
最近の事だが、面食らうような事件があった。M&Aの会社から書留便で丁寧な書信を受け取ったのである。
そこは企業の買収や合併を仲介する会社で、儲かるのだろうか、そんなブローカー屋のくせに一部上場会社である。開封すると:
「お宅の会社を買いたいという企業があるのでーーー」という内容であった。ウチを買収しようという怪しからん提案である。xxx日までに回答を欲しい、とあった。
更にこんな事が書いてあった:「買収後も現状の従業員を一人も解雇しないと約束するから安心されたいーーー云々」。つぼを心得た案内だ。従業員を味方につけないと買収は成功しないし、第一ウチみたいに小さい会社は、解雇していたら誰も居なくなる。それは良いとして、従業員は大いに安心だろうが、経営者である筆者は一体どうなるーーー?
無論高度な秘密交渉となるから、相手の会社名は(書信内では)明きらかにしていない。
青天の霹靂みたいな申し入れなので、無論大変びっくりはした。が、筆者はスパイ大作戦とスリルと女が大好きだから、こんな急所を突いた話にわくわくしない手は無かった。ついにウチが、知る人だけが知っている話題の会社が狙われたかーーー。




