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コーヒーと冬木立

 常識を覆す発想という程ではないが、長生きしたければ青汁を飲んだりラジオ体操をするより遥かに効き目のある習慣が、「起業しなさい!」である。スタートするにはちょっとした勇気が要るけれども、何時からでも遅くはない。筆者のような販売会社でもよいし、食堂でも・ウドン屋でも・お菓子屋でもよい、作家になるのも起業の一つだ。


 中学時代の同級生M君が絵手紙教室を近所の主婦相手に開いているが、筆者は感心している。語学が出来るなら語学教室も悪くは無く、Y君がやっている。現役時代に営業部門で活躍していた知り合いのK君とJ君は筆者より5つほど若いが、経験を生かして「一人商社」を運営している。二人は時々ウチの会社へ遊びに来るが、儲かっているとは思わないが損はしていないようだ。


 ボランテイ活動も無論いいが、出来ればお金を儲けるのがよい。それが励みになるからだ。十億円を儲けなくても、起業(企業)なのだから最低でも損益とんとん以上を目指すのが望ましい。そうすれば、死ぬ日まで「シャン」と出来て、つまりは長生きが出来る。


 こういう事を専門に研究している学者がおり、「幸せな人生」を送るには以下の三点の心理的な充足が必要だそうだ:

①他の人とつながっている「関係性」

②何かに貢献・役立っている「有能感」

③自分で決めて行動する「自立性」


 面白いのはここに「お金」という言葉が一切出てこない事だ。強いていえば②が、貢献への「お礼」の結果としてお金を得ることに繋がるだろうか。例えばサラリーマンは①と②は充足しているが、③が欠けているから幸せ度が66%。年寄りは①と②と③が同時に欠けがちで、最悪の場合幸せ度が0%。


 老人は若者より幸福感が高いと表面的にはおだてられるが、(学者の論理に従えば)内実は不幸のどん底。冒頭の彼女のように泣く人も居る位で、「起業しなさい」と筆者がささやく所以であるし、そうすれば先の三点を死ぬ日まで充足して100点を取れる。


 「コーヒーに 少しの未来 冬木立」(吉行和子:女優) 一人コーヒーを味わいながら、少しの未来とは先行きの少なさを意味し、冬木立は老人の寂しさを象徴しているのだろうか。


 日々の暮らしの中で、起業する事によって老人としての悲しみが完全に無しになるとまでは言わないが、毎日エンジンが掛かっているから、コーヒーと少しの未来はずっと継続して楽しめそうである。冒頭の女性のように泣く回数は減ると思う。歳を取る事を含めて人生はコントロールできない事も多い、でもちょっとした勇気で自分の最終章を少しはシャンさせ、「生きているときは、いきいきしている」の状態にする事が出来ると思う。


お仕舞い

2021.8.23




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