シャンとする
まず、先の船の正解は:船外から見れば船が動いているか停泊しているか一目でわかる。けれども船内にいたらそうは行かない。
分る方法がある。(音や振動は別にして)航行している船は(或いは、モータボートみたいに疾走している船は)「揺れない」(揺れが小さい)。が、停泊している船は波のまにまにゆらりゆらりと「不安定に、大きく揺れる」。普段の観察力をチェックさせて貰ったが、指摘されたら思い当たる人が多いに違いない。
自分の意思が無いみたいにゆらゆらしていた船は、エンジンを掛けて走り出すと揺れがビタリと収まり、シャンとなる。だから目をつぶっていても、乗船しておれば違いの判別が付くという訳だ。
これは物理の慣性の法則で、回転していない独楽は倒れるが、高速で回転している独楽は(同じ姿勢を保とうとして)倒れない(=シャンとしている)のと同じ理屈だ。法則の応用範囲は広く、「ダラダラせずにシャンとしなさい!」としっかり者の母親は、そう言って子供に物理学でねじを巻く。
そんな船の動きは、人の人生みたいな処がある。目的を目指して真っすぐに進んでいる人は、目つきも定まってエンジンが掛かっているように見えるし、歩く姿もシャン・シャンしている。通勤電車内で痴漢をやったり盗撮をやるヒマは無い。
停泊している船は波のまにまに揺れるが、自らの意思でゆれるのではないから、人で言えばシャンとしていない。




