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コギト・エルゴ・スム

 哲学者は紙と机と書籍と格闘しながら考えたり思考したりするのかも知れない。けれども、先の接着剤の思考のプロセスの通り、行動と実験をしながら突き詰めて行き、哲学をやった事になる。専門の言葉を筆者は知らないので、仮にこれを「実行哲学」と名付けよう。実行哲学者とは筆者の別名である。


 もう一例を挙げたい: 本書の前半でやや揶揄する調子で(これは申し訳なかったが)紹介した日本電産の永守社長。座右の銘を思い出して欲しい:「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」。永守さんは(現在は老齢だが)創業者であり会社は大きな成功を収め、世間の耳目を集めているのはご承知の通りである。


 若い時から会社を始め、苦労もあったろうし、問題にぶち当たってあれこれ正解を求めて考えたと思う。経験も積んで、ついに体得した(会得したというべきか)のが、「(ヤラない事ではなく)ヤルx3回」だったのだ。

 「会社を成功させるとは何か?」を哲学の命題として立てたら、永守さんの正解は「すぐヤル・必ずヤル・出来るまでヤル」なのだ。優れた「実行哲学者」がここに一人居る事になろうか。


 「人間とは何か?」の命題に対して、「人間は考える(=哲学する)葦である」(パスカル)という。又哲学者デカルトは「自分と存在は何か?」の命題に対して、「我思う(=哲学する)、故に我あり」(=コギト・エルゴ・スム:ラテン語)の回答を示した。響きのよい言葉で、高校時代の国語の先生もしきりに心酔してはいた。教わる方も如何にも人生の深淵を覗くように感じがちだ。


 けれどもーーーと筆者は思うのである。その哲学は何も生まないじゃないかと言いたい。生むとすれば国語の授業で暗記項目が一つ増える位なものだ。

「すぐヤル・必ずヤル・出来るまでヤル」の永守の方が、遥かに優れた「実行哲学」だと筆者は思うのである。


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