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胡散臭い角度

 銃から話が変わって、筆者は歳が入ってから近年新製品の開発に関わった。ある日思いつて「これは、いける!」と思ったので、没頭した。ボルトを締め付ける為の新技術製品で、仮にTNと名付ける。


 それなりにお金を掛けて作り上げた試作品は、丁度100年前にMr.ブローニングがAuto-5銃を作り上げたのと、状況は良く似ていた。試作にヤスリこそ使わなかったが、寸法や角度を少しづつ変えて数種類の試作品を作った。書けば一行だが、実際には3ケ月が掛かった。


 今まで市場に存在しなかったものだから、開発過程で実験と沢山な試行錯誤をしなければならなかった。アイデアが良くても、実際に顧客が使って期待した締付け力が出ないとか機能が上手く働かなければ、当社の取引先に大手が多いだけに、信用を失うとこっちのダメージが大きい。


 気が変になる程根気よく、あれこれ実験を繰り返し、ついにTNの斜面の角度を2.5°と決定した。出来た、そして公表し特許も申請した。


 そう書くと、如何にも実験と論理的思考を経て2.5°に「たどり着いた」と思うだろ。けれども、実はこれにはウソがある。考えてもみ給え、もし本当に精密な実験と論理的計算から導かれたならば、結論が2.5°なんて綺麗な数字に「ピタリと来る」訳がないじゃないか! 美しく歯切れの良い数字には「胡散臭い」ものがある。


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