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職人の技

 ミロク製作所では、FN銃の部品を下請けとして作るだけでなく、それとは別に国産の自社ブランドのミロク銃(ライフルとショットガンの両方:スポーツ銃とも言う)も作っていた。先祖は(高知土佐らしく)捕鯨砲を作っていたのが、時代の変化に合わせてスポーツ銃メーカーへと変身し、既に100%それが本業となっていた。その90%以上が海外向け。


 メカの話に戻るが、国産のミロク銃であろうとFN銃であろうと、作動するメカが一瞬でも引っかかったりすれば、暴発して自分の片腕が吹っ飛ぶ危険もある。ミロク銃では、部品の組み立てを目の細かな紙ヤスリを使ってデリケートな曲面同士の「すり合わせ」をしながら、手作業で最終の仕上げをしていた。その部分だけは「伝統の職人技」に頼っていた。


 因みに、検査員の立場の筆者とミロク社とは必ずしも何時も仲良しとは限らなかった。言い争いはしょっちゅうで、しかも激しいものであった:


「いごっそう」というのが土佐の県民性で、頑固で気骨のある男と言う意味である。悪く転ぶと、頑固が優先して決して譲らない。対してこっちは、神戸生まれでハイカラと軽薄が染みついたみたいな男。ぶつかり合わない方が不自然で、喧嘩が毎日の仕事であった。もし話を男女間に置き換えるなら、少なくとも100回は離婚した。


 ミロク社の人達は銃の仕上げ工程で、ヤスリによるデリケートな擦り合わせ技術を大変誇りにし、練磨し、かつ大事にしていた。長年の高度な技の伝統が、神戸から(転職して)ポッと来たハイカラ色の三十過ぎの馬の骨に何が分かるか!と考えていた。事実、筆者には何も分からなかった。


 命に係わる銃の最重要部分の玄人仕事の部分だけに少々の事では譲らず、技術と伝統を重んじる彼らの誇りはある意味もっともであった。老練な職人達だけでなく、工場の現場長も製造部長も社長にも、そんな技に対する拘りと誇りがあり、それに「いごっそう」が加勢した。

 この伝統の技術文化は当然ながら、ミロク社が抱える多くの下請け工場の隅々にまで浸透していた。


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