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ウオールナット

 話を技術面に移して、銃というのは一種の精密機械:弾をいちいち詰め替える必要のない、五連発のAuto-5(オートファイブ)というショットガンが当時あった。世界的に知られた伝統のブランドである。この銃は引き金を引いて一発が発射されると二発目が「自動装填される」仕組みになっている。


 弾の自動装填と言っても、電池モーターがあったりAIが操作しているわけではない。

 一発目の発射の反動だけで、銃身※(=長い筒)と内部の複数の機械部品が連動して動き、弾倉内に収納されている二発目のカートリッジ(=多数の小粒の散弾が収められた弾の事)が外へ引っ張り出され、エレベーターみたいに持ち上げられ、最終的に正しい発射位置へとピタリ装填されるのだ。あとは(二発目の)引き金を引くだけとなる。


※想像しにくいでしょうが、長い銃身自体も銃全体に対して(5センチ程度)瞬時に前後にスライドして動く。速過ぎて動きは目には見えない。


 書けば長ったらしいが、すべての部品は「反動(或いは反射)」という言葉一つに支配され、先の10工程ほどの複雑なメカニズムが目にも止まらぬ速さで次々将棋倒しで進行する。丁度高みで解き放たれたジェットコースターが人々の悲鳴を載せて、上に下に途中様々な仕事をしてから出発点に戻るような仕掛けだ。

 一秒の数分の一という瞬く間だから、ジェットコースターどころではない、高速度カメラでないと目視でメカの動きを捉えるのは不可能。


 長い年月試行錯誤を繰り返して、経験的に進化してきた銃内部の部品と機能だ。精緻で巧妙なメカというありきたりな言葉では、言い尽くせない。精緻さは、一発目の発射による火薬の爆発で発生する「巨大な衝撃力」に耐えなければならないからだ。

 想像してみて欲しい、頑丈な壁に車を猛スピードで正面衝突させて、機能を損なわず損傷しない車があるかーーー、というのに等しい。衝撃に耐えるメカの実現は決して容易な事ではない。銃床に使われるのも、そこらの木材ではダメで、衝撃に対して強靭なクルミの木( ウオールナット)に限られる。



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