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サンタクロース

 人を問い詰める迷惑な悪癖のもう一つの例は、小学5年生の頃に起きた: 筆者は心身ともに生育がおくてだった。これを錯覚して、「老成した感じ」が当時からあったと言う友達も居るが、何となくボンヤリした子だったから、そう見えたのだ。時代が違うせいか、昔はハキハキした子は軽薄に見られた。


 授業で、「動物の中で人間が一番賢い」と教師が呪文を唱えるみたいに言った。何かの拍子に口をついて出た言葉だったようだが、ボンヤリした子は呪文が妙に気になるタイプ。内心でこう気になった:


「ヘエー本当にそうかな、なぜそうなのかな? 人間が一番賢いという証拠があるのかな? 先生は世界中を旅した事は無さそうだのにーーー。アフリカの奥地にもっと賢い動物がきっといるに違いない」と。

 本気でそう疑ったのを今も覚えている。人より偉い生き物が存在しない事の、いわゆる今も昔も「不在証明」は難しい。こうして教師は、子供達から絶え間ない品質管理を受けるものだ。


「人は町を作ったり文明を作ったから」と、教師は状況証拠を一つ挙げた。これが如何にも言い訳めいていたから、こっちは疑惑を一層深めた:「ああ言うのは、不安げな口調からしてやっぱりウソに違いない。先生は文明と言うが、(人間の知らない処で)悪魔が地底都市を作っているかも知れないじゃないかーーー」

 

「見た事もないくせに、先生はよくそんな断定が出来るものだ」と疑った。小五と言えどもこっちは生まれが正統派だったから、サンタクロースの存在もちゃんと信じていたし、地底都市から毎年贈り物をかすめ取って来る要領の良い人物だ、と思っていた。



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