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天国みたいな環境

 筆者は物事に夢中になり過ぎる傾向があるが、コロナ禍で女友達のバツイチ子持ち女とデートもできないしスポーツジムにも行けない分、最近は独りでやれる研究と開発にいそしんでいる。先に述べた通りである。

 そんな次第で、数ケ月毎に来社するエンジニアリング商社D社の部長はボルトの専門家だが、ウチへ来るたびに新しい開発品を目にしてびっくりしている。慣れない人から見れば、発明が一種特別な才能と映るようで、尊敬してヨイショをやってくれる。乗っかって自社も儲けようというのが見え見えだ。


 けれども実際は、先に書いた通り「研究」とは現象を「よく観察し」、一歩一歩順を追って歩を進めてゆく根気(=調査)と、少しの論理的な思考を加えて、一定の結論(犯人の特定)に到達する事である。推理小説の犯人捜しの手法と同じだから、推理小説が好きな人は、研究者として大いに素質があると思う。


 それと大事なもう一点がある:基本的に大概の人は無意識に小さな発明を日々の生活でやっているものだと思う。生活で感じる「xxxが不便だな、zzzとなったらいいのに」という不満が、実は発明なのだ。こんな言葉がある:「正しく提起された問題には、既に解答の半分が含まれている。」筆者の長い経営体験から、発明に拘らず経営問題でもそうで、この言葉は実感として正しい。


 ただ一般の人は何かを思いついても、具体的に作ってみたり、探求してみたりする道具や機器が手近には無い。大抵お金も掛かるから、素晴らしいアイデアを思いついても、それ以上に思考を深める事をしない。当たり前の心理だ。


 翻って筆者の環境では失敗して元々、何でもやって見れる、道具も機器も身の回りにあふれている。お金だって湯水のごとくと行かなくても、配偶者の目を盗む程度には使い放題。出来たものが果たして売れるかどうかも、直ぐに「試して」見れる。

 優遇された天国みたいな環境を考慮すると、筆者は(大変残念ながら)特別な才能ではない。スケールは違うが発明王だったエジソンも似たような事だったのではないのかなーーーと筆者は考えている。


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