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責任の減少
高い理由の一つとして、老人の経験値の高さを主因に挙げる人がいる。様々な体験をしてきているので新たな厳しい環境に直面しても切り抜けられる術を身に着けているからだと。もっともらしいが、これは積極的に怪しい。
老人には試練と歴史が刻まれているというが、これは外見が風化して見えるからで、実際には何もかも体験している訳ではない。知識があるとしても三百年も生きて来た訳じゃないから、経験値なんてたかが知れている。それに今更切り抜けるべき「困難に直面」する機会自体が、若い人ほど頻繁にあるとは思えないからだ。直面する機会が無ければ、力を発揮して見せようがないじゃないか!
幸福度の高さは、そんな墨絵の仙人みたいな理由ではなく、単に若い頃に比べて人生における「責任の減少」のせいではなかろうか? 老人の中には、そう言われると何か軽んじらたようでがっかりする向きがあるかもしれない。が、「遊びをせんとや生まれけん」(梁塵秘抄:平安末期)の謡もあるくらいだから、引け目を感じる事はないと思う。




