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死ぬまで青春のまま

 開発に関係して様々な人(=100%例外なく筆者より若い人ばかり)と打ち合わせたり今も議論するが、筆者を眺めて特に初対面の人から驚かれる場合が多い。時々こっちから鋭い質問を向けられると、相手は自己嫌悪に陥るみたいだ。「仕事バリバリのオレがなんで、こんな年寄り風情にオタオタさせられるのかーーー」と顔に書いてある。


 何も若い人と互角に競争しようとか自慢で書いているのではない、そういう偏見或いは「勘違い」が世の中全般にあるようだ。


 確かに100mを10秒では走れないし、少しきつめのボルト作業を30分もやるとヘトヘトに疲れてしまうし、ひょっとすると明日の朝は二度と目が覚めないかもしれないと思う。けれどもだーーー、歳が入っても五感の中で最も衰えない部分と機能は、(世の常識に反するが)知性ではないかという気がしている。


筆者に言わせれば:退屈しのぎみたいにスーパーの棚に物を並べるパート仕事や、夜警の仕事をしたり、XXX理事長という名誉職を年寄りに与えるのは、誠に「もったいない」人の使い方だと思う。


 筆者が新しい分野に首を突っ込んで複数以上の新製品の開発を次々開始したのは77の後半からであった。開発に絡んで応力計算法が分からず、仕方なく大学時代の岩切晴二の古い参考書を本棚から引っ張り出して微分積分の勉強をやり直した。

 

 これも止む無くだが、数式混じりの機械関係の長い論文も複数読んだ。ただ、残念ながら読む尻から効率よく忘れたが。困難の一つは数式と図面を使って特許申請書類を体裁よく記述する事だった。何せ4件あったから。


 筆者の感想として、それらを勉強したり記述したりしている時点では論理と構成を100%理解しながらやっているのだが、それが終了した途端に10日以内に綺麗さっぱり忘れてしまうのは、一体何とした事か。この見事な忘却の技は最近習得した特技で、お陰でストレスが溜まらずクヨクヨ悩まないから、これも(歳が入ってこその)便利で新しい発見である。


 先に紹介した研究は(定年後にライフワークとして)事前に深く計画したのではなかった。たまたま配偶者が難しい病気なので、一緒に旅行したりして楽しめない。結果として、余った時間つぶしにボルト締め作業を休みなく延々としたのが切っ掛けだったから、行き当たりばったりの無計画の計画で、決して偉そうな事は言えない。


 そうだとは言え研究活動をやりながら、「没頭すれば」人は死ぬまで青春のままかも知れないーーーというのが実感で、これも老人になってからの新発見の一つなのである。


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