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楷書より草書

 例えば三角形の内角の和が180°というのは、算数の試験では180°ときっちり記述しないと丸をもらえない。正直な回答である。が、製品の性能としては、これを(わざと間違えて)183°で製造しても実用上問題が起きないのに気付いたようなものだ。更に考えを拡大して驚くなかれ、内角の和が200°のほうがもっと「良いらしい」と分かったーーーのである。原理の完全な無視だ。


 試しにウチの技術部のA君に話すと、突飛な話なので初め何のことだか見当がつかないらしく黙っていた。催促すると、「そらあきませんわ、社長! 矛盾ですわ、なんぼなんでも理屈に合いませんやんか!」。

 矛盾はあらゆる人間文化につきものだが、あらゆる人がこれを許容する訳ではない。不幸にして彼もその内の一人だ。


 内角の和が200°と声を大にしても人は信じないが、年寄りの天才一人が信じ切って没頭した:「なんのなんのーー大丈夫。ちょっとばかりA君みたいな批判に耐える忍耐力が要るだけ」。


 入試なら落第点だが筆者を責めたもうな、実は貴方だってやってるじゃないの; 正しい円周率は「π=3.1415926」だのに、3.14で誤魔化している。ひどい人はπ=3.0でやっている。きっと円が楕円になるだろう。因みに筆者の主張はπ=2.5に相当する。しかし、物は「考えよう」でラグビーボールみたいに円より楕円が大好きな人も居るし、文字でも楷書より草書で書くのが好きな人もいる。


 この「いい加減さ原理」(=筆者がそう名付けた)を先の製品に応用する事で、製造コストを何と当初の1/10以下に出来る。こりゃおもしろそうだと試作品をうまくこしらえて、現在は最後の微調整をやりながら新たな実験に挑戦中である。見通しはとりわけ明るい。

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