12角を6角にした
さて、筆者が長年携わってきた「物を販売する」仕事も様々な工夫が出来たり新しい発見があって面白い。その一方で歳が入って始めた現在の開発や研究の仕事も劣らず面白いものだ。研究では謎が一つ解けて新しい知見を得ても、手に出来たのは謎や疑問に対する答えではなく、新たな問題の発見である事が多い。例えば:
先に紹介した開発品「緩まない特殊ナット」(冒頭の②)を例に取ると、確かに性能は優れていると思うが、販売の為にいざ作るとなると、どうやって安く作る(=製造コストを下げる)かという新たな問題に直面した。
先ずどうひいき目に見ても形が如何にも複雑だ。図面通りに作ると販売単価が数千円(M16で)となる。これを精々数百円にしないといけない。高くて売れなければ人の役に立たず、社会の手本にもなれない。
考える内に、ほんの少しだけ製品の外形を変える事で、コストを半減出来る事に気づいた。ギザギザの外形を12角→6角にした。これだけでも大改良である。文章で書くと二行にも満たないが、アイデアに気付くのに1ケ月半は掛かり、実証試験に1ケ月は費やしたから実際には大仕事であった。
とは言え、労力は別にしてここまでは案外当たり前の思考である。単に12角を6角にしただけだから。




