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生涯の誓い

 当初開発したのは冒頭の①~④の4点だった筈だのに、これらが絡み合って、地域社会の協力みたいに⑤や⑥の別製品が生まれようとしている。実用品としてそれぞれがヒットしそうだから、これを眺めて天才と持ち上げてくれる人がいる。今更言われなくても、とうから本人には分かっているが、なにそう言うのは特許に乗っかって「儲けよう」と企む人達ばかりだから、(本人を含めて)余り信用にはならない。


 ルール自体は特許にならないが、⑤と⑥以外にも複数の応用品を思いついて次々申請した。

 この時から筆者の歩む人生は様変わりし、発見したルールという武器を手にして新しい世界に足を踏み入れた開拓者みたいな気分である。

 獲物を狩るには早めに動き出すのが大切で、誰かに先を越されないかと危機感を強めながら応用先探しに躍起になっている。探索に夢中になる余り配偶者の事も忘れた位だ。漱石にこんな俳句があると聞く:「月に行く漱石妻を忘れたり」 

 自分の事を大事に見てくれていないと知れば、妻の内心は穏やかでないかも知れない。


 それはともあれ、これが冒頭に述べた通り、②~④の「製品化(=販売)に手間取っている」訳なのである。応用製品の特許申請料だけで現時点で数百万円に達したから、先の8万円の「凄まじい費用」どころの騒ぎではない。(自分の存在を忘れられたせいもあって)配偶者は怒りでカンカンである。

 

 特許という文字を見ただけでロクでもない匂いがする、というのが女の口癖だから、筆者にとって手ごわい相手だ。申請金を返せと言われない見返りに、生涯もう二度と新たな申請はやらないと、筆者はきっちり誓わされた。それにしても配偶者と付き合うのに、筆者は何時まで経っても妙に不慣れだ。

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