常識を覆す
先般たまたま NHKの夜十時の番組「クローズアップ現代」を観た。再放送だったかも知れない:「夫婦の会話が驚き改善/脳科学・AIで分析」というタイトルだった。観た読者も多いのではないか。こんな番組が組まれたのは裏返せば「夫婦の会話に、日頃から問題がある」と感じている夫婦が多いせいなのだと思う。
けれども番組を観ていて、始終「違和感」を感じた。「ああ、中にはそんな夫婦もいるのだろうなーーー」と共感する感じが一切無くて、むしろ、一体世の中にそんな夫婦が存在し得るのかーーー、という驚きに近い。番組がことさらに物事を煽っていると疑った位だ。
取材されて複数の実際の夫婦も登場していたが、それらの会話が(私の感覚では)普通のようには思えず、だからと言って嘘をついている風にも見えなかった。
私は男だし、今の配偶者以外の女性と夫婦になった経験がないから、他の夫婦の事については全く無知な訳だ。それに、NHKが「現代の問題」として取り上げるくらいだから、取り上げられている夫婦の方こそ代表選手で「世の平均的大多数」なのだろう。
メインテーマは夫婦の会話はどうあるべきか、現状を「どう改善すべきか」であった。私の一番の驚きは、どうやら並みの夫婦ってものは「会話をする」もんなんだ、「会話をしなきゃいけない」もんだという点だった。私の持った違和感はここ。
大体からして果たして男が女に対して「何をしゃべるのか」と思う。(私の場合)セックスをやる(又は、やった)事はあっても、(互いに連絡や情報の伝達はあるが)しゃべる事など有りはしない。伝達と言えば、「今夜やろうよ」・「そうねーーー」でお仕舞い。仮に、今夜こそ考え得るありとあらゆる体位でハードにやろうと決心をしていたとしても、口では黙っている。行動で示すだけで、番組の基準から言えば、そもそもウチには会話が無い。
それを不便とか問題とかに感じた経験は、双方で結婚以来一度もない気がする。それだのに、番組ではこれを問題視して大真面に議論している。「夫婦の会話を改善するーーー」なんてテーマは、ウチにとって「あり得ないものを改善する」訳だから、長年の常識を覆すヘンな話になる。




