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◎第十六話: 「茶店の謎」の話

概要:

 小学校二年の当時私は「いじめられっ子」のアカンタレだった。が、同級の綺麗な女の子を好きになった。折角好きになったが、彼女の前で私は男のメンツを失う事件を起こした。好きだっただけに、受けた心の衝撃は余計に大きかった。

 事件の直後不思議な事に、彼女は私の前から蒸発するように姿を消してしまった。転校した訳でもなかったし、死んだわけでもなかった。何となく奇妙だった。あの子は「山の精」だったのではないかと疑った。


 「見返す」為に私は「社長になる」決心をした。人生のたそがれ近くになって、どうにか間に合って成れた。「ちゃんと成れた」と知らせる為に、小学二年当時の女の子の「棲み家」を突き止める行動を起こした。偶然の発見と苦心の末、ついに突き止めた。

    *

第十六話:茶店の謎の話

1.山の上


 元旦の午後、標高二百十三米の高倉山。名前程には高い山ではないが、須磨アルプス連山の一角で、山頂の茶店は眺めが良い。その日店内には数人の登山客が居た。いずれも一人づつで、お正月らしく静か。外は厳寒だが、透明なアクリル板をはめ込んだ窓からは、午後の陽が差し込んで店内は暖かい。


 歳は六十七だが、人生もあらかた済んで歳より風化しているから、七十過ぎに見える痩せた老人が一人でコーヒーを飲んでいる。ブルーマウンテンはこの茶店で価格が一番高いから、注文する登山客は少ない。が、ここ数年、年に一度元旦だけ高倉山へ登り始めてから、老人はこれを必ず二杯飲むと決めている。苦いから、ミルクと砂糖をたっぷり入れて飲むのは通らしくないが、ひと癖ありそうな顔の造作と合わせると、個性的ではある。


 老人にとって、コレを飲む為に彼は殆ど生涯に近い年月を費やした。一時間くらいぼんやり物思いに耽る様子には、何処かしら他の登山客と違った雰囲気があり、彼の周りにだけ寒い風が吹いているみたいだ。彼はこんな事を考えている: 

「もし、この山が無かったとしたら、自分の人生はひどく退屈なものになっていたろうーーー」


つづく



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