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直角に折れる

 職業柄ライフル銃の撃ち方にも習熟した。象を撃つ大型ライフルの試射をした事がある。その瞬間発射音の衝撃波でそばに置いたコップの水面にさざ波が立ち、5m離れた石油ストーブの炎が大きくゆらりと揺れる、のを知っている人は少なかろう。私には前例のない現象であった。


 そんな特殊技術に折角習熟したけれども、頼みにしていたベルギー人の上役が、3年後に会社の金を使い込んで首になってしまった。純潔を守り通した私は、機関銃を横流しした覚えも無かったし、昇給された以外に罪は無かったが、ついでにまとめて処理されたから、世は理不尽である。


 頭の良い人だったから、上役は会社組織の不備を簡単に見抜いて悪事を犯したのだろうが、おつむの使い方を間違えた。歴史を見ても切れ者の信長に上手く仕えられた人は少ないもので、秀吉がピカイチだったのはよく知られた事実。気難しく頭が切れる上役に仕えるのは容易に出来るものではない。


 秀吉とまでは行かないにしても、官房長官役みたいに私が立派に執事・秘書役をこなせ通したのは、特筆すべきかも知れない。平均以上に人嫌いなくせに、そのような能力が自分にはあると気付いて、今でも思い出して感心している。

 とにかく職を失い因果応報のルールから外れて、私の人生はここでポッキリ無関係な方面へ折れ曲がった。


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