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肩が凝らない

 また、それから十数年後の私が会社の経営者となった時の話だが、ドイツのある会社と一時合弁事業をやろうとした事がある。他の条件が折り合わず、残念ながら最終的に破談になかったのだが、相手の社長が自分の経歴をひけらかした上で、こっちの学歴をしきりに気にしたり、称号を問われて私が辟易した事がある。


 「Yes, Sir!」だけでなくプライドの高さは差別に近いと感じる位で、例えば日本の会社では工場労働者が管理部門や事務方に移動・移籍というのは格別珍しくはないが、欧州では殆どあり得ない。極めて少ない例外を除いて、工場労働者はあくまで定年までそこであり、エリートは画然とエリートの道しか歩まない。ベルギーの工場で銃砲の技術研修を受けた時、それが切っ掛けで工場の人と親しくしていた私を見て、「あんな男とは親しくするな」と上司からクギを刺された覚えもある。私の値打ちが下がると言われた。


 また、それから十数年後の私が会社の経営者となった時の話だが、ドイツのある会社と一時合弁事業をやろうとした事がある。他の条件が折り合わず、残念ながら最終的に破談になったのだが、相手の社長が自分の経歴をひけらかした上で、こっちの学歴をしきりに気にしたり、称号を問われて私が辟易した事がある。


 序での事に言えば、ウチの親会社ドイツの今の社長(世界的流行で、最近はCEOという言い方をするが)の肩書きはドクターであるし、そこのお抱え弁護士はプロフェッサーなのである。名刺に麗々しくそう印刷して、人を脅しつける。

 私はドクターでもプロフェッサーでもないから、何時も脅しつけられる側だ。間違ってエッセイストなどの肩書きを自分の名刺に刷り込んだりすると、ケタケタ笑われてきっとまともな人間とは見られないだろう。そんな堅苦しい感じは文化の違いと言えるが、日本の社会の方が肩が凝らないから、私は好きだ。



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