表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/1757

◎第十五話: 「営業マン募集」の話

第十五話:「営業マン募集」の話


 A地区で、ウチは現在営業マンを募集している。割りに沢山応募者が来る。面接は私が行うが、応募者には五十を越えた人もいる。


 五十と言えば人生で長年揉まれて来たから、その分野で「出来上がった」筈の人という事になる。言葉を変えれば、ベテランの域に達している。こっちのそんな期待に違わず、応募者は自画自賛する: 「自分は、長年営業職に携わった超ベテランである。だから云々ーーー」と、なるほどーーーと思う。


 営業職(=物を売る人)というのは、他の職種とは少し違った「特殊な職業」。机にしがみ付いて仕事をする設計マンや、現場で立ち働く技術職や監督とも違うし、当然事務職員や教師らとは、違う。一番大きな違いは、その人の力量が「売るか・売らないか」の二点だけに絞られ、「数字」で評価される。だから、誰の目にも出来・不出来が容易に正確に判別出来る。

 けれども、面接の時点では皆目分からないーーー。が、果たして、本当に分からないだろうか?


 今は差別も少なく分け隔ての無い世の中。昔と違って成功する為の手段も多いし、学歴も無関係。今ほど自由とチャンスに恵まれた時代は無い。言い換えれば、「出来のよい」営業マンなら、本人がその気になれば、幾らでも何でも(販売出来て)稼げる時代だ。起業も簡単、自分で宣言すればよいだけだ。


 商品の利点を説明し、買うように説得するのは、商品の種類を問わず共通したものがある。一旦マスターすれば、こんな便利で融通の利く職は他に無く、お金持ちになれる一番の近道でもあるから、営業マンほど「素敵な商売!」は無い。


 さて、面接をやるこっちは多少の営業経験があって、言ってみれば、その道のプロだから、先の事が良く分かる。だから、五十過ぎの営業職への応募者の顔を、しげしげと眺めて怪しむ事になる: どうして、今更安いはした金の給料で、誰かに雇われたいと考えるのか? その歳とベテランという経験があるなら、明日からすぐ稼げるのが、営業職じゃないか。どうしてウチみたいなケチな会社へ応募して来るんだーーー? 


 例えば彼は、面接官へこう言っても良かったのだ:「ここへ来る前に、御社の製品をネットで勉強して来ました。実に、素晴らしい製品です! 不採用で構わないから、ワシに個人的に売らせてくれんか? 営業費の負担は、折半でどうだい?」

 こんな事を言われでもしたら、私は即決で応えるだろう:「まあ、そんな事を言わずに、ウチへ来てくれんか? 給料は弾むぜ! 営業費は全額会社持ちだ」


  *


 五十を過ぎてからの営業職への応募自体が、既に矛盾している。「自分はよう売らないーーー」を、自白しているようなもの。採用される道理がない。営業職の場合、年齢の条件だけでハネられてしまうのは、この理由による。面接官に裏まで見抜かれるからだ。


 そんな人に限って大概、本人に自覚が無くて、不採用の結果を受けて「俺は営業のベテランだのに、採用係は見る目が無いとか、年齢で差別するのは不公平だ」と、首をひねっているようだがーーー。採用する側も、先の理由を露骨に言えば失礼だから、相手には言わない。だから、はねられた本人には、不採用の理由が永久に判らない。


 営業の世界では、物事が判っている人と全然判っていない人と、二種類が居る気がする。


 完

比呂よし




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ