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女は得よね

・生まれて初めて突然営業の世界に入って、毎日が強い緊張の連続でした。最初の半年余りの間に、沢山の新しい未知の人に出会いました。二種類の人がいました:女と見て冷ややかで嫌な思いをさせられた人と、他方でそれを超える数の心の通う人々との出会いがありました。


・自分なりに努力をしましたが、最初はどうしてよいか分からず、空回りも多かったから、人からは「ええ歳こいたおばちゃんがーーー」と、時に滑稽にすら見えた筈です。が、数多くの中から幾人かの方は、私の努力を認めて下さいました。そんな時は本当に心から有難いと思い、そんな出会いを特に大切にしました。


・女性としては歳を取り過ぎているおばさんである上に、仕事に不慣れな見苦しさが、随分と頼りなく見えたと思います。正直を言うと、これが反って良かったように感じる時もありました。

 訪れた顧客の中には「不器用で場違いなおばさんだ。しょうがない、何とか応援してやろうか」と見てくれる方もいたからです。自分がもし男性ならこうは行かなかったと思います。そんな方には特に感謝しています。


・営業の仕事は、物を売り歩き利益を得てゆくのが使命、とは分かっています。男性の営業マンなら、売れた・売れなかった、勝ち・負けーーーという風です。けれどもそんな足し算引き算ではなくて、私に味方をし応援してくれる方々の心根に応える意味でも、製品に「自分の心」も付け加えて売り歩きたいと考えるようになりました。

 営業という仕事を通して、少しでも魅力ある人間として成長出来るようにと考えながら今もやっております。

   *

 更に文章外で筆者に語った処によると、女はこんな風な事も言った:

「私のセールスは、人から人への紹介です。初めどうしてよいか分からなかった。紹介された人を訪れ、またそこで新しく次の人を紹介して貰って、そこでまた次を紹介して貰ってーーーの繰り返しなんですよ。


 私が頼りなく見えるから気の毒がって、「アソコへ訪問してみてごらんよ、(製品の)話だけでも聞いてやってくれ、とひとこと電話を入れておくからさ」と言われた事が何度かありました。


 言われるままにそこを訪れるんです。そしてラッキーに上手く受注になると、紹介してくれた人に必ずお礼をするのよ。たった数百円のクッキーとかチョコレートとか。「(工業製品を)そんな事をして売るもんじゃない」と叱られそうですが、感謝の気持ちなんです。男の営業マンだったら、こんな風にはやらないわね。


 そしたら、また紹介してくれたのよ。それにこの業界で女のセールスマンは珍しいから、話だけでも聞いてみようかとなる人も居たから、悪いばかりじゃないわ。案外女は得よね!」

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